【裁判例⑤-⑦】

以下の裁判例は高次脳機能障害の事案ではあるが、やはり多くの裁判例が
介護保険給付の控除を否定している。

【裁判例⑤】神戸地判平成12年10月10日(交民33巻5号1640頁)
事故時74歳女子が見当識障害、記銘力低下等5級2号後遺障害を残した事案

裁判所は「被告は、原告が自ら進んで申告しない限り、被告から損害賠償金を
取得し、三田市から介護保険給付を取得することになり、原告は2重に
取得することになると主張するが、原告が自ら進んで申告するか否かは
現時点で断定する資料がないところ、被告が三田市に情報提供して、
介護保険給付と損害賠償金の清算、調整をすることもできると思われるから、
原告が2重に取得すると断言できるものではなく、被告の右主張も
失当である」と判示した。

【裁判例⑥】東京地判平成15年8月28日(自保ジャーナル第1525号)
21歳女子会社員が高次脳機能障害等で1級3号を残した事案

裁判所は(原告が65歳となる)「平成52年以降に現行の介護保険制度が
そのまま維持される保障はないことからすれば(平成17年に介護保険制度の
見直しないし再検討が予定されていることは、被告らが自ら主張する
ところである。)、給付が確実に受けられるとは到底いい難く、損害額から
控除することはもとより、介護費算定の一事情として斟酌することも
相当ではないから、被告らの主張は理由がない。」と述べて介護保険を
前提とする控除を否定した。

もっとも、将来介護費の金額の算定においては、現在の介護費を原告主張の
とおり日額4万円を下らないと認定しつつも、介護保険制度が検討・見直しを
予定されていること、今後介護方式が多様化し、安価な介護方式が提供される
ことが予測されること、原告が死亡するまで現在の介護水準が維持される
蓋然性は低いことを考慮し、「損害の控えめな算定」という観点から、
日額4万円ではなく2万4000円と認定した。

【裁判例⑦】福岡地判平成17年7月12日(自保ジャーナル第1612号)
事故時69歳女子が高次脳機能障害等1級後遺障害を残した事案

裁判所は「未だ支給が確定していない将来の介護保険給付(予定)額は
控除すべきでない(最高裁平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻
4号3039頁参照)」として介護保険給付分の控除を否定し、また、
「予測される原告の生存期間である今後十数年の間に、各種介護サービスが
より廉価で利用できるようになる具体的な見込みが存することを認めるに
足りる証拠はなく、現時点で利用可能な介護サービスを使用する場合に
実際に要する実費を基礎として将来の介護費用を算定せざるを得ないと
いうべきである」として将来介護費の算定においても実費額を基礎とした。




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