小括

このように,脊髄損傷における,労働能力喪失率に関する裁判例を概観するに,
現時点(口頭弁論終結時)において,就労することができているかどうか,
ないし事故後に就職することができていたかどうか,今後の就職可能性が
あるかどうかが,個別具体的な判断において重視される。

例えば,③の裁判例では,原告の完全対麻痺,膀胱・直腸障害等の症状に加え,
簿記の資格の取得を試みるなどしているにもかかわらず,雇用先を見いだす
ことが出来ていない事情を考慮し,今後の就職可能性もないものと判断した。

⑤の裁判例では,口頭弁論終結時においては就職していないのであるが,
事故後,入院中からパソコンによる作業訓練を受け,文書入力,編集操作等を
習得し,別の会社に就職していたことがあり,また,採用はされていないものの,
毎月のように公共職業安定所にでかけることも出来ていること等を評価して,
今後の就職の可能性もないとはいえないと,100%の喪失率を認めなかった。

他方④の裁判例は元の就労先での勤務を継続した事案であるが,
判決時においても勤務を継続することが出来ているという事情があり,
100%の喪失率が争われる事案では,以上のような事情が喪失率の判断に
影響を及ぼしていると思われる。

また,上肢機能について,動かすことができたとしても,それは現実の就労を
こなすことができるものでなければならず,直ちに100%の喪失率が
認められるわけではない(①の裁判例)。そして,あくまでその他の症状を含め,
全ての症状を総合して判断されることとなる(②の裁判例では,
原告は膀胱直腸障害を負っており,排尿,排便に介助が必要となる可能性が
示唆され,さらに発熱,下痢の症状をしばしば起こすことが考慮された。)。




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