⑨裁判例:東京地判平成16年12月8日自保ジャーナル1589号

事故時年齢 50歳
性別 男性
職業 鳶杭打ち
傷病名 頸椎捻挫,頸髄不全損傷,頸髄症
自賠責認定等級 併合6級(7級4号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,
軽易な労務以外の労務に服することができないもの),11級7号
(脊柱に変形を残すもの))
本判決認定喪失率 67%

事案の概要
本事案は,上表記載のとおり,自身の後遺症が併合6級に認定された原告が,
裁判時においても痛みのために治療を継続しており,肉体労働を伴う
職業に復帰することが不可能であること,また,事務職に転職するとしても
50歳という年齢から雇用しようとするものが存在しないであろうから,
転職が事実上不可能であること,現在毎週農作業に従事しているものの,
リハビリ等のために行っているものであり,これにより収入を得ることが
不可能であることを主張し,6級相当の67%では余りに低く,79%を
喪失率とすべきとして逸失利益を請求した事案である。

これに対して被告は,まず脊柱の変形障害について,症状改善の治療のために
生じたものであるから,労働能力喪失の根拠とすべきではないとした上で,
原告が,ほぼ毎週金曜日の昼過ぎから日曜日の夕方まで,自ら所有する土地へ
車を運転して出かけて,1日2ないし3時間程度の農作業をしており,
少なくない量の収穫を上げていることから,軽易な労務を十分に行うことが
できるとして,7級相当の56%を労働能力喪失率として主張した。

裁判所は,まず,原告の痛みが残存している旨の主張については7級4号の
認定に含まれているとして排斥した上で,被告の,脊柱変形に関する主張に
ついては,「症状改善のための治療として椎弓形成術の施行を受け,この結果,
脊柱の変形障害が残ったものであるところ,これは治療行為であるから
労働能力に影響しないと主張する。しかしながら,本件事故がなければ,
原告は椎弓形成術を受けることはなかったこと,脊柱の変形障害は,
脊柱の支持機能・保持機能に影響を与え又は与えるおそれがあることから
すると,労働能力喪失率について脊柱の変形も含めて考えるのが相当である」
として喪失率に影響を及ぼすものと判断し,6級相当の67%を認定した。

分析
本判決も,労働能力喪失率を考える際に,手術の結果生じた脊柱変形を
考慮するかどうかという問題に関するものであるが,本判決は,前記⑦の
判決と異なり,これを積極に解している。この点については裁判所によって
判断が分かれており,確定まではしていないものと思われる。




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