骨盤骨変形

裁判例1      名古屋地裁平成15年12月19日判決
当時の慰謝料の基準 290万円
増額慰謝料額    600万円(310万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、測量業務に従事する24歳の男性公務員です。
被害者がオートバイで直進走行し交差点内に進入したところ、加害者が大型貨物車で
左折する形で交差点内に進入してきたため、これを避けたところガードレールに
衝突したという事故です。

この事故により被害者は、骨盤骨変形を理由として第12級の後遺障害等級認定を
受けたという事案です。

なお、被害者は、骨盤骨変形以外にも歩行時に軽度の左膝関節痛があり(非該当)、
これが第12級の後遺障害に該当すると主張していましたが、
この主張は退けられています。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①骨盤骨変形が逸失利益に反映されなかったこと。
②被害者の職場での不自由、昇格面や長期的将来に対する不安。

解 説
本件事故では、骨盤骨変形という第12級の後遺障害が認められています。
第12級の後遺障害における労働能力喪失率は14%です。

また、被害者は後遺障害等級認定がなされていないものの、左膝痛により業務に
支障をきたしていると主張しています。

しかしながら、結論として裁判所は、骨盤骨変形の後遺障害や左膝痛により
逸失利益は発生していないと判断しました。

その理由として、被害者が公務員であり、本件事故後も特段の収入減少や降格等も
認められず、労働能力に支障をきたしていないことをあげています。

骨盤骨変形は、痛みなどが伴わなければ、労働能力に影響を与えると
判断されにくいでしょう。

また、公務員などの職種のように、後遺障害が残存したとしても、
現実の収入減や降格などの処分がなされにくいものについては、逸失利益が
否定されることがあります。

これは、逸失利益が原則として現実の収入減を意味すると考えられているためです
(差額説)。

もっとも、直ちに労働能力に影響がないとしても、将来的には収入減や降格が
なされる可能性も否定できません。

そのため、本件事故においても、裁判所は「原告の職場での不自由、昇格面や
長期的将来における不安等の諸問題については、後記の後遺障害の慰謝料額に
ついて考慮する」と判示し、慰謝料を増額しました。

このように、骨盤骨変形や非該当の左膝痛という逸失利益が否定され易い障害で
あったとしても、最後まで諦めずに慰謝料増額を狙い交渉を進めるべきでしょう

裁判例2      横浜地裁平成3年10月31日判決
当時の慰謝料の基準 1000万円
増額慰謝料額    1200万円(200万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、19歳の女子大生です。
道路内において2台の車両が接触事故を起こし、その内の1台が歩道に乗り上げ、
歩道上でバス待ちをしていた被害者に衝突しました。

この事故により被害者は、

①左足関節全廃を理由として第8級、
②右腓骨偽関節を理由として第8級、
③骨盤骨変形を理由として第12級、
④左下肢短縮を理由として第13級の後遺障害等級認定(これらを併合して第6級)

を受けたという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント
①骨盤骨変形等が完全には逸失利益に反映されなかったこと。

解 説
本件では、後遺障害等級として併合第6級の認定が下されましたが、
労働能力喪失率が争われました。

自賠責保険の基準によれば、第6級の後遺障害の労働能力喪失率は67%です。

しかし、本件事故で裁判所は、就労可能年齢の67歳まで50%の労働能力を
喪失したと判断しました。

67%から50%の喪失の理由の詳細は明らかにされていませんが、偽関節、
骨盤骨変形及び下肢短縮等の後遺障害が労働能力喪失にさほど影響を与えていないと
判断されたものと考えられます。

もっとも、逸失利益としては評価できないとしても、上記後遺障害が就職等に
おいて不利益に働くことも考えられます。

裁判所も「将来の昇級、昇任に影響が及び、又は転職に際してハンディキャップを
負うなどの蓋然性を否定できないこと」などを指摘しています。

そのため、裁判所は完全には逸失利益を認めなかったものの、これらの将来的な
不安等を総合的に考慮して、慰謝料増額を行いました。

本件では、骨盤骨変形以外にも、複数の逸失利益に勘案されなかったと思われる
後遺障害が存在しますが、骨盤骨変形が慰謝料増額の一端を担っていると
考えることはできるでしょう。




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