生殖機能障害

裁判例1      京都地裁平成12年8月17日判決

当時の慰謝料の基準 510万円
増額慰謝料額    560万円(50万円アップ!)
  
どのような事故だったか?
被害者は、24歳の男性派遣会社員です。
被害者が渋滞道路の左端をオートバイで走行中、渋滞車両が停止して加害車両に
右折を促したことにより、路外の駐車場に入ろうとした加害車両と被害車両が
衝突したという事故です。

この事故により被害者は、左睾丸喪失を理由として第11級、右手関節障害を
理由として第12級の後遺障害等級認定(両者を併合して第10級)を
受けたという事案です。

なお、被害者は事故前から交際していた女性と結婚することを考えていましたが、
睾丸喪失を理由に結婚を拒否されるに至り、心因性の勃起不能に陥っているという
事情があります。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①睾丸喪失が逸失利益に反映されなかったこと。
②被害者が未婚であったこと、年齢、心因性の勃起不能が生じていること。

解 説
本件では、後遺障害等級として併合第10級の認定が下されています。
本件事故では、睾丸喪失と右手関節障害という二つの後遺障害が認められています。

しかしながら、睾丸を喪失したとしても、労働能力に影響を与えるとは通常考えられません。
そのため、裁判所も右手関節障害という点のみを捉えて逸失利益の算定を行いました。

もっとも、睾丸喪失が直接的に労働能力喪失に影響を与えないとしても、
若年の独身男性が睾丸喪失により、男性としての自信をなくすことや、将来結婚が
できないのではないかという不安を抱くことは想像に難くありません。

また、本件では被害者が心因性の勃起不能に陥っているとの事情も見受けられます。

そのため、裁判所は睾丸喪失につき逸失利益を認めなかったものの、これらの
精神的苦痛を総合的に考慮して、慰謝料増額を行いました。

本件事故では、左睾丸のみの喪失であり、心因性の勃起不能も将来的には改善される
余地があるため、高額の慰謝料増額がなされなかったものと思われます。

これが、両側の睾丸喪失(第7級13号)であれば、慰謝料の増額幅も
大きいと考えられます。

裁判例2      東京地裁八王子支部平成13年9月27日判決
当時の慰謝料の基準 1100万円
増額慰謝料額    3296万円(2196万円アップ!)
  
どのような事故だったか?
被害者は、美大卒業後、美術予備校の油絵科の28歳の男性講師です。
被害者が道路左側をオートバイで走行中、制限速度を時速20~30キロメートル
超過した加害者の乗用車が、被害車両に後方から衝突しました。

この事故により被害者は、
①左腎萎縮及びインポテンツを理由として第7級、
②腰部以下の知覚障害及び両足部以下の筋力低下による運動障害を理由として第9級、
③脊柱変形障害を理由として第11級、
④移植骨採取による骨盤骨変形障害を理由として第12級の後遺障害等級認定
(これらを併合して第6級)
を受けたという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント
①インポテンツが逸失利益に反映されなかったこと。
②被害者が若年の独身男性であったこと、婚姻が困難になること、
たとえ婚姻できたとしても婚姻生活が制限されること。

解 説
本件では、後遺障害等級として併合第6級の認定が下されていますが、
どの程度の逸失利益が認められるのかが争われました。

自賠責保険の基準によれば、第6級の後遺障害の労働能力喪失率は67%です。

しかし、本件事故においては、左腎萎縮及びインポテンツ、移植骨採取による
骨盤骨変形障害については、労働能力に影響を与えないとして逸失利益の算定根拠と
認められませんでした。

結論として、裁判所は就労可能年齢の67歳まで45%の労働能力を喪失したと
判断しました。

もっとも、インポテンツが直接的に労働能力喪失に影響を与えないとしても、
若年の独身男性がインポテンツになることにより、社会生活のみならず婚姻にも
支障を与え、仮に婚姻できたとしても婚姻生活の制限が強いられることは明らかです。

そのため、裁判所はインポテンツにつき逸失利益を認めなかったものの、
これらの精神的苦痛を総合的に考慮して、高額の慰謝料増額を行いました。




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