歯牙障害

裁判例1      東京地裁平成16年8月25日判決

当時の慰謝料の基準 420万円
増額慰謝料額    700万円(280万円アップ!)
  
どのような事故だったか?
被害者は、44歳の男性会社員です。
被害者が乗用車に乗車し停車していたところ、居眠り運転を行っていた加害者の
普通貨物車が後方から衝突しました。

この事故により被害者は、

①脊柱障害を理由として第11級、
②歯牙傷害(10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの)を理由として第11級、
③頸部痛を理由として第14級、
④左肘痛を理由として第14級の後遺障害等級認定(これらを併合して第10級)を
受けたという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①歯牙障害及び外貌醜状が逸失利益に反映されなかったこと。
②脊柱障害が逸失利益に完全には反映されなかったこと。

解 説
本件では、後遺障害等級として併合第10級の認定が下されています。
第10級の労働能力喪失率は、自賠責保険の基準によれば27%です。

しかし、歯牙障害や脊柱障害では、逸失利益が否定されることがあります。
歯牙障害は、入れ歯等を行えば外見から判別しにくくなるため、労働能力が
喪失したと判断し難いからです。

また、脊柱障害については、変形が生じただけで何ら痛みを伴わないこともあるため、
労働能力が喪失したと認められないことがあります。

本件事故で裁判所は、5年間、5%の限度において労働能力を喪失したとして、
逸失利益を算定しました。

原則からすれば、就労可能年齢の67歳までの間、27%の労働能力を喪失したと
考えるべきですから、大きく逸失利益を否定したことになります。

裁判所が逸失利益を否定した根拠は、上記のとおり歯牙障害や脊柱障害が
労働能力喪失に影響を与えていないと判断したためです。

もっとも、歯牙障害が直接的に労働能力喪失に影響を与えないとしても、
口内の違和感により集中力が低下することや、発音に悪影響が生じることも
考えられます。

また、脊柱障害については、ヘルニア等の発症を促進するおそれも否定できません。

そのため、裁判所は完全には逸失利益を認めなかったものの、これらの不利益を
総合的に考慮して、慰謝料増額を行いました。

裁判例2      大阪地裁平成13年8月23日判決

当時の慰謝料の基準 100万円
増額慰謝料額    170万円(70万円アップ!)
  
どのような事故だったか?
被害者は、美容室を経営する女性とその娘です。
被害者である女性は、娘を乗せて乗用車で走行していました。
時速30キロメートル制限の交差点を直進中、速度超過で一時不停止の加害車両が
飛び出し、被害車両と衝突しました。

この事故により被害者である娘は、歯牙傷害(3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの)
を理由として第14級の後遺障害等級認定がなされました。

また、顎関節症も残存しましたが、これは非該当として後遺障害等級は
認められませんでした。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①歯牙障害及び顎関節症の残存が逸失利益に反映されなかったこと。
②歯牙障害及び顎関節症の残存につき再治療の可能性があること。

解 説
本件では、後遺障害等級として第14級の認定が下されていますが、
逸失利益が認められるかどうかが問題となりました。

第14級の労働能力喪失率は、自賠責保険の基準によれば5%です。
しかし、歯牙障害では、逸失利益が否定されることがあります。
歯牙傷害については、入れ歯等を行えば外見から判別しにくくなるため、
労働能力が喪失したと判断し難いからです。

本件事故で裁判所は、「歯牙障害が残存しているほか、上記顎関節症状も
一応認められるが、これらはいずれも労働能力の制限を伴うほどのものとはいえず」
として、逸失利益の発生を認めませんでした。しかしながら裁判所は、歯牙障害や
顎関節症状につき、将来的に再治療を行う必要が生じる可能性があることなどを
考慮して、慰謝料の増額を行いました。

このように、歯牙障害では逸失利益が否定されることが多く見受けられますが、
将来的に再治療や再手術が必要となる可能性を主張し、慰謝料増額を狙い交渉を
進めるべきでしょう。




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