将来の夢、事業の挫折

裁判例1
東京地裁平成10年10月9日判決

当時の慰謝料の基準1100万円
増額慰謝料額1250万円(150万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、11歳の女の子で、将来は音楽大学に進学して音楽教師になることを
目指していました。

被害者は、高速道路のパーキングエリアにいたところ、前方注視を欠いた加害者の
運転する車両が、時速約50㎞で被害者に衝突しました。

この事故により、被害者は、外傷性てんかん、右不全麻痺、言語障害、外貌醜状の
併合第6級相当の後遺障害を負いました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①被害者の将来の夢挫折

解説
本事案の被害者は、将来音楽教師になる夢を持ちその夢に向けて努力しており、
本件事故以前は成績も優秀でした。

しかし、その夢も、本件事故による右不全麻痺等の後遺症によりほぼ断念せざるを
得なくなりました。

裁判所は、被害者が、音楽大学に進学して音楽教師になる蓋然性があったとまでは
認めることはできないとしています。

しかし、実際に夢が叶うかどうかはともかく、被害者は、夢を持ってその実現に向けて
努力し続けていたのに、交通事故により、その夢を実現することはもとより、
その夢を追い続けて努力することすらほぼ断念せざるを得なくなったのです。

これは、被害者にとっては、人生の生き甲斐、喜びの大半を奪われたといって
よいでしょう。

夢の実現はもとより、実現のための努力すらできずに生き甲斐を奪われた被害者の
精神的悲しみ、辛さ、悔しさなどは、計り知れないほどに大きいものでしょう。

本事案の裁判所も、慰謝料の算定に当たっては、被害者が夢をほぼ断念せざるを
得なかったことを「特に考慮すべき」といい、慰謝料増額事由であることを明示しています。

裁判例2
横浜地裁平成5年8月26日判決

当時の慰謝料の基準120万円
増額慰謝料額180万円(60万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、鉱業会社の専務取締役を務め同社の事実上の主宰者であった男性で、
山砂採取事業を計画して営業活動を行っていました。

しかし、被害者が高速道路の右側追い越し車線を走行中、左側走行車線を走行していた
加害者がいきなり追い越し車線に入ろうとして、被害車両に衝突し、
頸椎捻挫の傷害を負いました。

原告は、この事故により16ヶ月間通院治療を受け、痛みのために山砂採取の現地に
行くことができず、無念にも事業が頓挫したという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①将来成功を目指していた事業の頓挫
②損害補完

解説
まず、本事案では、被害者の頸椎捻挫に関する痛み等の後遺障害は、後遺障害の
等級認定では非該当となっています。

しかし、裁判所は、この後遺障害が本件交通事故と全く無関係ではないといえないかも
しれないとして、慰謝料の増額の要素としています。

その意味では損害の補完として、慰謝料が増額されたといえます。

そして何より、本事案では、被害者がかねてより計画していた山砂採取事業が
交通事故により頓挫したという事情があります。

被害者は、鉱業会社の事実上の主宰者として、この事業の成功を目指して準備を
進めてきたにもかかわらず、事故により事業は頓挫し、この会社自体も休眠状態と
なりました。

裁判所は、被害者の企画していた事業の成功については、被害者が事故に遭おうと
遭うまいと極めて不確実であった認定しています。

しかし、事業成功の客観的見通しはともかく、これを企画して準備を進めていたのに
途中で挫折せざるをえず、会社も休眠状態となったことを考慮して、
慰謝料を増額しています。

これは、成功の可能性が低くとも、目標を掲げ、それに向けて努力していたのに
志半ばで諦めざるをえない悔しさ、悲しみ、「事故にさえ遭わなければ」という
無念の思いが強いことを重視し、精神的苦痛が大きいと考えられているからでしょう。




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