人工妊娠中絶

裁判例1
京都地裁平成16年7月14日

判決当時の慰謝料の基準124万円
増額慰謝料額180万円(56万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、会社経理として働く有職の主婦で、妊娠4~5週目の子供がお腹の中に
いました。
被害者が乗用車を運転、停止していたところ、後方から加害者の運転する原付自転車に
衝突され、頸椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を追いました。

被害者は、これら傷害の治療のためにレントゲン検査を受けましたが、この検査の
被爆によりお腹の中にいた胎児の奇形出産を恐れ、人工妊娠中絶を行いました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①被害者の人口妊娠中絶

解説
この事案で、加害者側は、被害者のレントゲン検査による被爆線量は僅かであり、
胎児に影響を及ぼすものではないため、妊娠中絶する医学的正当性はないと争っており、
これを裏付ける証拠も提出されています。

裁判所も、医学的に奇形児出産の蓋然性があるとか、中絶手術について医師の
積極的勧告があったとは証拠上認められないといいます。

しかし、裁判所は、被害者の人工妊娠中絶を「厳密な医学的見地からの当否は別としても、
社会的に無理からぬ点がある」と指摘して、慰謝料の増額事由であると明確にいいました。

裁判所は、被害者の人工妊娠中絶が医学的に相当でないとしても、被害者が医師から
レントゲン照射による奇形児出産が意外と多いと言われたことから出産に不安を抱いて
中絶を希望した経緯があることも考慮し、慰謝料を増額しました。

確かに、レントゲン検査の放射線被爆による人工妊娠中絶の医学上正当性がないので
あれば、交通事故と中絶手術は関係ないものとして、慰謝料を増額しないことも
一理あるといえるかもしれません。

しかし、厳密に医学上どうかはともかく、胎児を身籠っている被害者としては、
医師からレントゲン照射による奇形児出産が意外と多いなどと聞かされれば、
産まれてくる子が奇形児ではないかと不安になるのは当然であり、これを恐れて
中絶手術に及ぶことはやむを得ないといえます。

被害者の気持ちに立てば、中絶は無理からぬことであり、非常に楽しみにしていた子の
出産を自ら諦めざるを得なかった精神的な辛さ、無念などが、慰謝料増額に
つながったといえるでしょう。

裁判例2
大阪地裁平成6年1月19日判決

当時の慰謝料の基準40~50万円
増額慰謝料額100万円(50~60万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、妊娠初期の会社員でした。
乗用車を運転して信号停止中、後方から加害者の運転する乗用車に追突されて頸部・
腰部挫傷で約2ヶ月通院したのですが、その間妊娠2週目に気づかずにレントゲン検査を
受けたために妊娠中絶手術を行いました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①被害者の人工妊娠中絶

解説
本事案で、被害者は、妊娠2週目の子がお腹の中にいたのですが、これに気付かず、
事故による頸部等挫傷の治療のためにレントゲン検査を受け、内服薬による治療を
受けました。

その後、妊娠していたことが発覚し、医師から人工妊娠中絶が必要と診断されたために
やむなく中絶手術を受けざるを得ませんでした。

被害者としては、この交通事故に遭わなければ、愛する子を無事に出産して、
楽しい家庭を築けるはずでした。

産まれてくる子がどのように成長していくかは、一生の楽しみであったに違いありません。

しかしながら、被害者は、本件交通事故により、お腹の子を産む機会、子の成長を
見守る楽しみを中絶という形で自ら諦めざるを得なかったのです。

被害者としては、「この交通事故にさえ遭わなければ…」と一生辛い思いが続くはずです。

裁判所も、被害者のこのような精神的打撃が甚だ重大であること明示して、
慰謝料を増額しています。




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