被害者に責任転嫁する言動

裁判例1
東京地裁平成14年4月18日判決

当時の慰謝料の基準2000万円~2200万円
増額慰謝料額3000万円(800万円~1000万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、19歳の男子アルバイト大学生でした。

早朝にオートバイを運転して青信号で交差点に突入したところ、加害者が赤信号で
あることを認識していたにもかかわらず交差点に突入したために被害者に衝突し、
被害者は死亡しました。加害者は、事故後救護せず、責任を被害者になすりつけるために
虚偽の供述を重ねたという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者の悪質な運転態様
②事故後の責任転嫁の言動

解説
本事案ではまず、加害者が20トンもの大型トラックで赤信号を無視して交差点に
突入するという、人が死亡しても全く不思議ではない悪質な運転が、慰謝料増額の
ポイントとしてあげられます。

裁判所も、「故意にも匹敵する重大かつ一方的過失」と認定し、慰謝料増額事由で
あることを明言しています。

さらに、本事案では、加害者の事故後の責任転嫁の言動が極めて不誠実なもので
あるとして慰謝料増額事由とされています。

というのも、加害者は、

①事故後、現場に集まって来た人に「ああ突っ込まれちゃった」とあたかも自分が
被害者で悪くないことを印象づけるような発言をし、

②警察官に対し被害者が赤信号の表示を無視して交差点に進入したのが事故の
原因であると述べ、

③事故交差点の信号のシステムを知っていたことから、そのシステムに照らし自分が
青信号で交差点に入ったと見せかけるために虚偽の運転ルートを供述して工作を
行ったこと

④逮捕後も当初は頑強に被害者に責任を転嫁する供述を続けていたこと

⑤事故後被害者を傍観していたにもかかわらず救護活動をしたかのような嘘の供述を
するなど、数々の責任転嫁、不誠実な対応をとっていたのです。

確かに、人はともすると、自分の責任を免れるために不合理な供述をしたり、
責任を他人に押しつけたりしがちなところがあります。

しかし、本事案では、加害者が全く言い逃れができないような非常に悪質な運転で
被害者を死亡させたにもかかわらず、事故当初から、被害者が赤信号で進入した
ことにしようと責任転嫁を画策し、一般の人や警察官に嘘の供述を重ね、
さらには信号のシステムを知っていたことを利用して工作を図るなど、人として
余りに許せない不誠実な対応をとり続けたのであり、これにより被害者や遺族が
受ける精神的ダメージは図りしれません。

本事案では、悪質な運転とあいまって、当初から画策して責任転嫁の言動を
とり続けたことが、慰謝料増額のポイントとなっています。

裁判例2
東京地裁平成16年2月25日判決

当時の慰謝料の基準2800万円
増額慰謝料額3600万円(800万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、54歳の男性で、家族は妻と母親がいました。

早朝に自動車を運転中、飲酒して対向車線からはみ出して突入して来た加害者の
運転する車両に衝突され、死亡しました。

事故後、加害者は一切被害者を救護せず、自分の罪を免れるために被害者に
責任転嫁する供述をしていました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①飲酒運転
②救護せず
③責任転嫁の不自然な供述

解説
本事案は、飲酒運転という悪質な運転態様や、事故後、加害者が救護活動を一切せずに
携帯電話をかけたり煙草を吸ったりしたという事情が慰謝料算定に考慮されています。

本事案で大幅に慰謝料が増額しているのはそれだけではなく、加害者が自分の
罪を免れるために、真実は自分がアルコールの影響を受けセンターラインを超えて
対向車線に進入したにもかかわらず、被害者が先にセンターラインをオーバーしてきたと
不自然な供述をしたことがあげられます。

亡き被害者や遺族としては、正常に運転していたにもかかわらず、センターラインを
超えて対向車線に進入したなどという通常ありえないような嘘の供述をされ、
責任転嫁されれば、怒りや悲しみも非常に大きなものとなるでしょう。

裁判例1もそうですが、加害者が重大な過失により事故を起こしたにもかかわらず、
被害者が重大な過失により事故の原因を生じさせたような虚偽の責任転嫁の供述が
なされた場合には、慰謝料も増額される傾向にあるといえそうです。




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