加害者側からの訴訟提起

裁判例1
神戸地裁平成12年3月30日判決

当時の慰謝料の基準440万円~470万円
増額慰謝料額850万円(380万円~410万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、29歳の男子で、父の経営する工務店で設計や事務の仕事を手伝う
一家の支柱的存在でした。

被害者は、夕方に見通しが悪く信号機の設置されていない優先道路を原付自転車で
直進中、交差点で加害者が進入してきたことにより、出会い頭の衝突事故となりました。

この事故により、被害者は、集中困難等の精神症状を継続し、9級10号相当の
後遺障害が残りました。

事故後、加害者が、被害者の入通院の頻度等を繰り返し照会したり、自分には
この被害者の損害については責任がないとして加害者側から提訴したという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者側からの調停、訴え提起

解説
加害者にとっては、交通事故を起こしたとしても、被害者が主張する病状や損害等に
ついて、果たして自分が全て責任を負うべきかということは、非常に重大な問題でしょう。

事故態様からして自分には非が無く、また、被害者の主張する後遺障害に疑問を
覚える場合には、病状を照会したり、加害者自らこれを裁判所で白黒つけようと
考えるのもある意味では当然といえます。

憲法も、第32条で全ての国民に裁判所で裁判を受ける権利を保障しています。

したがって、加害者が被害者を相手取り、自分には交通事故の責任が無く、
被害者の被った損害について支払わなくてよいことの確認を求めて裁判所に
提訴すること自体で慰謝料が増額するわけではありません。

しかし、本事案は、被害者が集中困難、易疲労性、易刺激症など精神症状の後遺障害を
負ったという事案です。

裁判所は、加害者が事故3カ月後から被害者に病状照会を繰り返し、自分は被害者の
損害については支払わなくてよいことを確認するために債務不存在確認を求めて
調停を申し立て、さらには訴えを提起したことにより、被害者のこの精神状態に
深刻な影響を与えた可能性があると指摘して、このような加害者の行動を
慰謝料算定に考慮しています。

したがって、加害者が被害者に訴え提起しただけではなく、これにより被害者の
精神状態に深刻な影響を与え、被害者の精神的な苦痛がさらに増大したことが、
慰謝料増額のポイントといえそうです。

裁判例2
神戸地裁平成12年11月16日判決

当時の慰謝料の基準2000万円
増額慰謝料額3000万円(1000万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、北海道で暮らす両親の元を離れて神戸の大学に通う、一人息子の
男子大学生(20歳)でした。

自転車に乗り歩道から道路へ出ようとした際、対向からガソリンスタンドへ
入ろうとしたトラックに衝突し、死亡しました。

加害者本人からは遺族へ謝罪の手紙もなく、加害者側からの示談案を遺族が拒否した後、週間後に加害者側から訴え提起がされたという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①被害者の年齢、家族構成
②加害者側からの訴え提起

解説
本事案では、まず、被害者が自らの夢を叶えるために生まれ故郷の北海道から神戸の
大学へ進学し、スポーツや勉学に励んでいたのに、20歳という若さで一瞬にして
生涯を終えた無念が慰謝料算定に考慮されています。

また、本事案では、加害者側から遺族へ訴え提起されたという事情があります。

しかし、裁判例1でも解説したとおり、加害者にも裁判を受ける権利が憲法で
保障されている以上、加害者が妥当と考える金額でしか賠償責任を負わないことを
確認するために訴え提起したこと自体で慰謝料が増額されるというわけではありません。

本事案では、この訴え提起の前までに、加害者側から十分な謝罪がなされず、
一人息子を失った遺族に対する対応が誠実ではなかったという事情があります。

また、この訴え提起も、遺族が加害者の提示した示談案を拒否したわずか一週間後に
なされたという点が特徴的です。

遺族としては、加害者側の示談案を断った後、どの点では応じることができ、
どの点では納得できないので再度話し合いを持とうとか、色々と落ち着いて
しっかり考えたいことが山積みだったと思われます。

そこに突然、加害者側から、今後は話し合いではなく、裁判所で決着をつけようという
訴状が届いたわけですから、これは遺族の心境を考えれば不誠実で、遺族の精神的な
傷はさらに深くなったといえるでしょう。

ただ単に加害者側から訴え提起がされたというだけではなく、それまでの加害者側の
不誠実な態度や、訴え提起のタイミングなどにより遺族の精神的苦痛が増大した
ということが、慰謝料増額のポイントといえるでしょう。




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ

0120-949-753

このページの先頭へ