加害者が救護せず、逃走

裁判例1
大阪地裁平成10年1月27日判決

当時の慰謝料の基準2600万円
増額慰謝料額2900万円(300万円アップ!)

どのような事故だったか
被害者は、30歳の男性でした。
片側2車線の右側道路を進行する車両に同乗中、左側車線を走行する加害者運転車両が、
安全確認をしないで右側車線へと進路変更したため、被害者の同乗する車両に衝突し、
この車両が川に転落して被害者は死亡しました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者が救護せずに逃走

解説
本事案は、加害者が救護せずに逃走したという事故です。
道路交通法第72条は、交通事故があったとき、運転者等は直ちに車両等の運転を
停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければ
ならないという救護義務を定め、第117条は、救護義務違反の罰則として
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金を定めています。

また、72条は、直ちに警察に事故が発生した日時・場所、死傷者の数・負傷者の負傷の
程度並びに損壊した物の程度・措置等を報告しなければならないと定め、
第119条1項10号は、これに反した場合の罰則として3ヶ月以下の懲役又は
5万円以下の罰金を定めています。

そして、被害者としては、事故を起こされた場合、加害者が迅速に救護措置をとり、
心から謝罪し、警察への捜査に正直に協力するのであれば、精神的苦痛もいくらかは
和らぐでしょう。

しかし、加害者が救護もせずに逃走すれば、被害者は事故を起こされた上にその場に
放置されることになるのですから、このような誠意ない扱いを受けたことにより、
被害者の辛さ、憤りは当然大きくなります。

裁判所も、加害者が事故後現場を逃走したことが被害者にいっそうの精神的苦痛を
与えたことが明らかであると指摘しています。

さらに本事案は、もし加害者が直ちに救護措置をとっていれば被害者が
死亡しなかった可能性も十分考えられるという事案です。

そうすると、「救護を受けることができたなら」という被害者の無念、悲しみはより
一層大きいといえるでしょう。

本事案は、慰謝料が300万円増額していますが、他方で加害者は事故後に
被害者遺族に見舞金として150万円を支払っており、これが慰謝料算定に
当たって減額の事情として考慮されています。

そうすると、この見舞金の支払いがなければ、より高額な慰謝料になったと
予想されるので、救護すれば被害者の生命が助かったのに救護せず逃走したという
事案においては、かなり高額の慰謝料が増額されるといえそうです。

裁判例2
東京地裁八王子支部平成13年8月2日判決

当時の慰謝料の基準2000万円
増額慰謝料額2200万円(200万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、24歳の女子会社員で、家族は両親がいました。
早朝に道路左側を原付自転車で進行中、加害者が運転するワゴン車に轢かれて
死亡しました。

加害者は、被害者を救護しないままに逃走し、この事故を目撃した人に追跡され、
警察への出頭を説得されたにもかかわらず、結局自らは警察に出頭しませんでした。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者が全く救護せずに逃走し続けたこと

解説
本事案では、まず、被害者が24歳という、まだまだ将来のある若さで生命を絶たれた
無念さが、慰謝料算定にあたり考慮されています。

そして、本事案の加害者は、被害者を轢いた後、停止すらせず、
全く救護しないままに逃走しました。

さらには、本件事故の目撃者が加害者を追跡し、警察に出頭するよう迫ったのに
加害者はこれを拒否し、加害者の同僚も警察への出頭を説得したのに加害者は
これをも拒否し、結局加害者は自ら警察に出頭せず、事故日から2週間以上経過した後に
警察に逮捕されました。

裁判所は、加害者がこのように救護をせずに2週間以上も警察への出頭を
拒み続けたことにより、遺族(両親)が娘を失ったばかりか、その娘を轢過した
運転者すら分からない中で怒りと悲しみに暮れたという事情を考慮して、
慰謝料を算定しました。

遺族としては、事故が起きた以上、加害者が潔く警察に出頭することを当然に望みます。

加害者がこれを拒めば、遺族は最愛の人物の命を奪った者が誰であるか、
どのような事情で事故が起きたか等を全く知ることもできません。

加害者を知ることもできずにただ時間だけが過ぎ、その間に不安、怒り、悲しみが
大きくなることにより遺族の精神的苦痛が増大したことが、慰謝料増額の
ポイントといえそうです。

裁判例3
東京地裁平成13年8月29日判決

当時の慰謝料の基準2000万円
増額慰謝料額2100万円(100万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、21歳独身の男性会社員で、朝、オートバイを走行中でした
(家族は父と弟で、被害者は長男)。

被害者は、加害者が横断中に押していた台車に接触したために対向車線に進出し、
普通貨物自動車と衝突して死亡しました。

事故後、加害者は、被害者を救護せず、事故への関与を自ら通報しなかったという
事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者が全く救護せずに、事故への関与を自ら通報しなかったこと

解説
本事案では、まず、被害者が21歳という前途ある青年であり、まさにこれから
という若さで生命を絶たれたという事情や、長男を亡くした父親の精神的苦痛が
慰謝料算定にあたり考慮されています。

そして、本事案では、加害者が被害者を救護せず、事故への関与を通報することも
なしに事故現場より逃走しました。

事故の真相を何としても知りたい遺族は関係者に依頼し、関係者が事故現場周辺で
チラシを配布するなどして目撃者探しを行いました。

その結果、関係者への匿名の電話で加害者の関与が明らかとなり、事故から5日後に
ようやく加害者は警察の事情聴取を受けることになったのです。

遺族としては、何としても事故の真相を知りたいというのが通常です。

しかし、この事案においても、加害者が事故への関与を通報しなかったので、
そのままでは真相は永久に闇の中となりかねませんでした。

そこで、遺族・関係者が努力した結果、加害者の関与がようやく明らかになったのです。

加害者を発見するまでの遺族の精神的苦労、真相が明らかにならない事への不安、
事故を通報することもなしに逃走した加害者への怒りなどにより、遺族の精神的苦痛は
より大きくなったといえます。本事案の慰謝料増額にあたっても、これらの事情が
重視されたのではないかと思われます。




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