加害者の証拠隠滅

裁判例1
大阪地裁平成9年12月11日判決

当時の慰謝料の基準約370万円
増額慰謝料額500万円(約130万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、美容師見習いの22歳の女子でした。
被害者は原付自転車で交差点を直進中、対向から右折してきた普通貨物自動車と
衝突しました。

事故後、加害者は被害者を救助せずに逃走し、加害車両の修理を依頼するなど
証拠隠滅を図ったという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者の逃走
②証拠隠滅

解説
本事案では、加害者は、被害者が大きな怪我をしていると思いながらも、
免許を取り消されることを恐れて被害者を救護せずに逃走しています。

加害者は、これにとどまらず、事故の発覚を恐れて、加害車両にワックスをかけて
付着していた被害車両の塗料を落とし、事故2日後には加害車両を修理工場に
持ち込んで修理を依頼し、なおも発覚を恐れ、その後修理依頼を撤回して廃車に
するように依頼するという徹底した証拠隠滅工作が行われています。

被害者としては、事故後は即座に適切な治療を受け、加害者が潔く事故の責任を認め、
スムーズに紛争解決の手続に移行することを望むはずです。

それにもかかわらず、本事案の加害者は、免許取消を免れたいという完全なる
自己中心的な理由により、救護もしないままに事故現場から逃走して、
更にはとにかく事故の発覚を免れたいとの理由で、徹底して証拠隠滅工作に
及んでいたのです。

免許取消を免れたいという自己中心的な理由で、事故と自分との関係を完全に
消し去ってしまおうという加害者の態度により、被害者の精神的苦痛は
増大したといえます。

本事案では、加害者がただ単に事故現場から逃走したのみならず、積極的に罪を
消し去り責任を免れようとした加害者の態度を重視して、慰謝料が増額したと
いえそうです。

裁判例2
東京地裁八王子支部平成15年5月8日判決

当時の慰謝料の基準2000万円~2200万円
増額慰謝料額2800万円(600万円~800万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、19歳の男子専門学校生で、深夜原付自転車を進行中でした。
そこに、甚だしく飲酒酩酊した加害者が、80㎞以上の猛スピードで小型貨物車両を
追突させ、その上約89メートルに渡り被害者を引きずり死亡させました。

その後、加害者は飲酒していたことを発覚するのを恐れて証拠隠滅したという事案です。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント
①飲酒、スピードオーバー、引きずり行為等の悪質な態様
②証拠隠滅
③被害者の年齢

解説
本事案では、まず、加害者の甚だしい飲酒酩酊状態、時速約80㎞以上のスピード、
被害者の引きずりという非常に悪質な運転態様が慰謝料算定にあたって考慮されています。

それのみならず、本事案では、加害者が飲酒運転の発覚を恐れて、被害者を轢いている
ことを認識しながら、コンビニエンスストアでワンカップの日本酒を購入し、
これをすぐに飲み、被害者を轢いた時には飲酒酩酊状態にあったことを分からなく
してしまおうという証拠隠滅行為がなされています。

この証拠隠滅行為により、加害者は、当初は飲酒運転について刑事上不問とされましたが、
遺族が署名運動、検察庁へ何度も上申書を提出するなどの活動を行ったことにより、
酒気帯び運転罪で追起訴され、通常の業務上過失致死罪から危険運転致死罪へと
罪名が変更されました。

加害者の証拠隠滅行為により、遺族の精神的苦痛は増大したのであり、民事裁判の
裁判所も、そのことを慰謝料算定の事情として指摘しています。

自分が犯した過ちに正面から向き合わず、それを意図的に隠してしまおうという
卑劣な行為により、被害者・遺族はより深く精神的に傷つけられたという点も、
本事案での慰謝料増額の重要なポイントといえるでしょう。




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ

0120-949-753

このページの先頭へ