施設介護と在宅介護の比較

在宅介護の方が施設介護よりも症状改善や認知症防止に効果があるという考えや、
施設介護では不特定多数の者から院内感染の危険があるということを重視すると
在宅介護を肯定する方向へとつながる。

裁判例 さいたま地判平成17年2月28日
(自保ジャーナル第1586号)
年齢 :72歳(事故時)
性別: 女子
傷害内容: 脳挫傷、外傷性くも膜下出血、左大腿骨頸部骨折等
自賠責等級: 高次脳機能障害等1級3号
被害者側の状況
左不全麻痺(左股関節拘縮)、高次脳機能障害などの後遺症により寝たきり状態。
現在介護老人保健施設に入所中。
介護内容: 常時介護
認定された介護費用: 施設介護を前提に月額45万1092円
原告の請求
年間240日(平日):日額合計1万6634円
(職業介護人日額1万4634円、近親者日額2000円)
年間125日(休日):近親者介護日額1万円

本裁判例は、
①被害者(原告花子)が現在、介護老人保険施設に入所していること、

②原告花子の要介護度は5であり、リハビリを辞めるとなおレベルが低下する
恐れがあること、

③同施設の入所・通所・ショートステイ判定会議の会議録の希望理由欄には
「在宅介護困難、少しでもADLの向上することを希望」と記載されているが、
これは同施設において原告花子の入所時に原告一郎から聞いたADLの状態
(寝たきり、全介助)、及び長男別居、次男独身で働いているという
家庭環境を考慮して、在宅介護は極めて困難と判断し記載したものであること、

④原告花子の要介護度は、入所から1年経過した時点でも5と不変であり、
リハビリ等の訓練を受けているものの、ADLの向上は全く見られないが、
著明な低下も認められず、少なくとも入所時にあった臀部の褥創は
改善傾向にあり、レベル維持には同施設での介護が有用であったこと、

⑤原告花子の入所後、家族から原告花子の在宅介護の申し出はなかったこと、

⑥同施設では、在宅介護が極めて困難と思われる症例に関しては、
一般的に入所6か月をメドに他施設へ移って貰うことを家族に考えて貰うのを
通例としており、原告花子については、ADLの向上もなく全介助の状態で
あるため他施設での介護が妥当と考えていたこと、

⑦平成15年11月1日現在では、原告花子のレベルは低下傾向にあり、
かつ、脳挫傷による器質性精神病(痴呆)があり、昼夜問わず大声(奇声)
を出すなど問題行動が出てきており、現状では、別の病院の
精神科療養型病床群の入院予約となっていること、

⑧同施設では、現時点では、家庭状況を考えると介護度5の範囲内のみの
サービスでは対応しきれないと考えていることを認定した上で、

「将来の介護費用は、被害者において症状固定後、現実に支出すべき費用を
補填するというものであるから、その算定に当たっては、症状固定時から
口頭弁論終結時までの被害者の介護の実態を踏まえて、将来の介護状態に
ついて相当程度の蓋然性に基づいた合理的な算定をすべきこととなる。
そして、本件において原告花子の症状固定後、口頭弁論終結時までの介護の
実態は、上記の認定のとおりであり、この事実及び原告花子の身体的状況
及び家庭状況に照らせば、原告花子の将来の介護につき、在宅介護の
蓋然性は極めて低く、現に、原告春夫及び同一郎から、同施設に対し、
在宅介護の申し出がなされた事実がないこと、既に、自賠責保険から
後遺障害分として2,534万円が支払われているにもかかわらず、
原告花子の自宅の改造をしたうえ、介護人等を付した在宅介護を行った事実が
ないことを総合勘案すれば、原告花子の将来の介護につき、在宅介護を
前提とすることは、損害の算定における合理性を欠くものというべきである。
よって、原告花子の将来の介護費用を考えるについては、施設介護を
前提として算定すべきこととなる。」

と判示した。

上記裁判例では、
b入所施設が、そもそも在宅介護ではなく他の施設での介護が妥当と
考えていること、

e入所後、家族からの在宅介護の申出はなかったこと、

d自賠責保険から後遺障害分として2,534万円が支払われているにも
かかわらず、自宅の改造をし、介護人等を付した在宅介護を行う
という在宅介護に向けた準備をしていないことなどを総合的に判断し、
在宅介護の蓋然性を否定している。




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