上記認定に至った理由

裁判所は、原告の自覚症状(左顔のしびれ感、違和感、右方注視時の複視、
緊張時の構音障害、左足不安定、根気、集中力低下、記銘力障害、
平衡感覚障害など)について、

①医師がその障害の程度を中程度ないし軽度であり、日常生活は可能だが
より高次の仕事はできないと診断していること、

②それら障害はCTスキャン、MRI検査において、左前頭葉、右側側頭葉の
脳裏に脳挫傷の痕跡が認められ、脳波検査でも右脳半球の棘波、徐波が
存在するなどの他覚的所見による裏付けがあることを理由に脳挫傷等に
起因する症状であると判断し、

③後遺障害が脳挫傷に起因するものである以上、今後の改善の見込みは少ない
とし、9級10号、喪失率35%を認定した。

この点、原告は、7級4号に該当すると主張したが、裁判所は

①「前記後遺障害の内容・程度に照らし、…(7級の障害の)…程度に
達しているとまでは認め難く」、

②「現に(証拠略)によれば、住友製薬株式会社に再就職し、医薬品製造工場に
おける製造、検査、包装、分析研究補助、一般事務等の業務に従事し、
相応の収入を得ていることが認められる」

として、原告の当該主張を退けた。

他方、被告側は、原告の後遺障害認定に関する自算会の調査時、同会の顧間医は、

①提出された脳波上、特段の所見は認められない、

②事故から約2年後のCT上、前回画像(その2ヶ月以上前の画像)を
上回る所見は認められない

として、脳損傷による原告の神経症状に対する影響はさほどのものでは
ないとの見解を示していることなどから、原告の症状は客観的には局部に
頑固な神経症状を残すものに該当するに過ぎず、同症状が脳損傷等の
中枢神経の損傷に起因するものとは認められないと主張した。

これに対し、裁判所は、以下のとおり検討し被告側の当該主張を退けた。

すなわち、「一般に、脳波所見、CT等の所見に関する判断は、
医師によっても評価が分れ得る微妙なものがあることは確かであるが、
現代医学においては、CT、MRIによる診断にも限界がないわけではなく、
その像からは必ずしも脳損傷、神経系統の損傷が明確に読み取れない場合で
あっても、実際には、脳・神経に機能的障害が存し、現実にかなりの
神経症状が生じ得ることも稀ではないことは周知の事実であるところ、
本件においては、前記のとおり、本件事故による受傷部位が原告が
本件事故により(ママ)脳挫傷等である上、頭部CT、MRI上、左前頭葉、
右側頭葉に脳挫傷が、脳波検査でも棘波、徐波がそれぞれ認められるのであり、
他方、原告の前記自覚症状は、医学的に脳損傷に起因するものとしては
理解が困難なものであること等を認めるに足る証拠はないのであるから、
当裁判所としては、一般人の経験判断に照らせば、原告の前記症状は
脳損傷等の中枢神経に起因する神経症状であり、本件事故と因果関係を
有する高度の蓋然性があるとみるのが相当と判断する。したがって、
前記被告らの主張は採用できない。」と判示した。




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