上記認定に至った理由

原告は、
①強い記銘力障害・計算障害等の後遺障害が残存していること
②症状固定後今日に至るまで、何度も職場復帰を試みたものの、いずれも奏功せず、
今日でもなお無職であること

③記憶障害の改善が最早望めないこと

から、原告が終身労務に服することができないとし、後遺障害の程度は3級に
相当すると主張した。

他方、被告は原告の3級に相当するとの主張を否認した。

裁判所は、
①WAIS-R検査では特に知能指数の低下は認められなかったが、個々の
検査内容では、算数問題、復唱問題、符号問題で明らかな低下が
示されているほか、ベントン視覚記銘検査でも欠陥ありと評価されており、
三宅式対語記銘力検査でも記銘力障害有と判断されていること

②症状固定後も、やかんで湯を沸かしていることを忘れ空焚きしてしまったり、
子供のミルクを作る際に5杯目を越えると何杯目かを数えられないこと

③復職を試みた際、電話を架けている途中で他のことに気をとられると、
自分が電話を架けていることを忘れてしまったり、指示された作業内容を
覚えておらず、作業内容を記載したメモを渡されてもそのこと自体を
忘れてしまう等の症状が残っていること

④医師が原告の就労の見込みについて「単純な繰り返し作業に限定すれば、
繰り返し行なうことにより作業手順を覚えてそれを行なうことは可能と考えます。
ただし、その作業手順に少し変化が生じた場合、混乱が生じ対応できない
ことになる可能性が強いと考えます。本人は、現在自信喪失しており、
職場の理解と我慢強い援助があれば、失敗しながらでも作業を続けることにより
少しずつ作業範囲の拡大が得られるものと思います。記憶障害が原告の障害の
中心ですが、記憶障害も作業療法等のリハビリテーションで改善します。
就業をある意味でのリハビリテーションと考えれば、本人が今後の社会生活を
続けていくためにも、積極的に取り組むべきです。」と判断していること

から、「原告は、脳外傷による高次脳機能障害により、単純繰り返し作業などに
限定すれば就労も可能だが、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると
作業を継続できなくなったりするなどの問題があるため、一般人に比較して
作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を
欠かすことができない。」とし、後遺障害等級5級2号の後遺障害が
残存したとして、原告の労働能力喪失率は79%と判示した。

また、原告は単純繰り返し作業に限定すれば就労の見込みがあると
認められるので、今後いかなる職業にも全く就労が不能であると認める
ことはできず、現時点で復職できていないことをもって労働能力が
100%失われたとはいえないとした。




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