裁判例⑱東京地判平成15年2月24日(自保ジャーナル第1496号)

裁判例⑱東京地判平成15年2月24日(自保ジャーナル第1496号)
年齢: 11歳(事故時)
性別: 女子
職業: 事故時:小学生、訴訟時:高校生
傷害内容: びまん性軸索損傷等
自賠責等級: 高次脳機能障害9級10号
比較基準喪失率: 35%
本判例等級: 不明
本判例認定喪失率: 20%
概要: 11歳女性について、症状の経過が良好であること、就労前
(訴訟時点で高校在学中)であり現実に労働能力の制限や減収の発生が
明白であるとは言い難いこと等を理由に、11級相当の20%を認定した

a 上記認定に至った理由
原告は、①脳挫傷の程度は、昏睡の期間と外傷後健忘の期間が長く重症であり、
CT像上も広範な脳挫傷像を示し、脳挫傷に伴う身体的筋力低下がある上、
強度の頭痛発作に悩まされていること、②てんかん発症のリスクファクターは
極めて高いこと、③認知障害、情緒、行動、心理、社会的障害が顕著で
あること、④原告は、高次脳機能障害下にあり社会適応は極めて困難な
状況にあること、⑤右頭損傷による後遺障害は不可逆的な損傷であり、
改善は期待不可能で生涯継続することなどを主張して、9級相当の35%を
主張していた。

他方、被告は、①運動機能に障害は認められず、外傷性てんかんに移行する
可能性は低いこと、②知能指数も正常の範囲内の数値であること、
③小児頭部外傷は重傷の機能障害もしばしば回復をみせるという特徴を
有しており、原告もその例にあたること、④原告の予後は極めて良好で
あることなどを主張して、労働能力に制限があるとは考えられないと主張した
(喪失率ゼロを主張していたものと思われる)。

裁判所は、喪失率を減少させる事情として、①経過は良好で、脳波に異常はなく、
外傷性てんかんに移行する可能性も低いこと、②事故後約4年を経過した
時点で県立高校に通学し、頭痛薬を服用する程度で通院もしておらず、
ほぼ通常人と同様の日常生活を送っていることが認められること、
③原告は就労前であるため、現実に労働能力に制限があることや収入の
減少が生じることが明白であるとは言い難いこと、といった事情を挙げる
一方で、喪失率を増加させる事情として、④びまん性軸索損傷等の障害を負い、
事故後約1週間は覚醒せず、その後約3週間は刺激すると覚醒するという
状態であったこと、⑤画像上脳梁損傷が認められること、⑥集中力がなく
記憶の保持に障害があること、⑦事故後6年以上経過しても知能指数に特段の
変化がないことを挙げ、結論としては喪失率を20%とするのが相当で
あると判示した。

なお、裁判所は、以下のような医師の詳細な意見を考慮した上で、
原告の症状の経過が良好であると認定している。すなわち、医師は、
①症状固定から約1年5ヶ月経過した時点で脳波に異常が見られなかった、
②症状固定から約3年後の時点では脳梁に外傷性変化が残っているものの、
これが頭痛の原因になっているとは証明し難い、③脳波に異常はなく、
定期的な脳波検査は不要と判断された、④以後外傷性てんかんに移行する
可能性は低い、といった意見を述べており、本裁判例ではこの点が考慮した上で、
経過が良好であるとの認定をしている。

b 分析
本裁判例は、自賠責で認定された9級であれば喪失率は35%相当になる
ケースが多いにもかかわらず、20%と認定している点に特徴がある。
原告の症状の経過が良好であることが、そのような認定に大きな影響を
及ぼしたものと思われる。

また、本裁判例において、原告の症状の経過が良好であるとの認定が、
医師の詳細な意見によって裏付けられている点は参考となろう。




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