裁判例⑯名古屋地判平成13年5月25日(自保ジャーナル第1429号)

裁判例⑯名古屋地判平成13年5月25日(自保ジャーナル第1429号)
年齢: 31歳(事故時)
性別: 男子
学歴: 不明
職業: 消防士(事故時)。事故後復職し配転を受けて稼働。
傷害内容: 脳挫傷、くも膜下出血等
自賠責等級: 高次脳機能障害7級4号
比較基準喪失率: 56%
本判例等級: 不明
本判例認定喪失率: 症状固定時33歳から60歳までは40%、
60歳から67歳までは56%
概要: 31歳男性について、事故後復職し配転勤務している事情があるが、
事故時の収入が少なくとも定年まで維持されて減収がないとまでは
いえないこと等を考慮して、労働能力喪失率については上記のとおり認定した。

a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責の認定した7級4号に相当する56%の喪失率を主張していた。

他方、被告は、原告の収入について、事故前年も、事故から2年後の
復職時点においても給与所得はほとんど変わらず、また、事故から5年後の
訴訟時点においても、事故前と同一の勤務先(消防局)で就労し、
事故前とほとんど変わらない給与所得を得ている点を指摘した上で、
管理職への昇格の可能性の喪失等の事情を考慮したとしても、喪失率は
30%以下とされるべきであると主張していた。

裁判所は、まず、①原告が事故から約1年10ヶ月後に復職し、配転を受けて
4年以上稼働していること、②復職後、事故前の97%の年収を維持している
ことを認定した。他方で、③事故後は昇級昇格のペースが落ちていること、
④事故後の昇級の状況に照らすと将来は管理職となる可能性も相当程度
あったものと認められるが、後遺障害により管理職への登用は困難と
認められること、⑤後遺障害により業務力が劣る可能性があること、
自覚症状として情緒不安定、感情失禁があり、医師等の見解でも独自での
判断で行う作業や素早い行動などは困難で制限があり労務遂行の巧緻性や
持続力において平均人より著しく劣る状態、あるいは事務系の比較的軽易な
仕事しか遂行し得ない状態にあること等を考えるとき、原告が地方公務員の
職にあるからといって安易に後遺障害によって退職となる可能性がないと
断言することはできないことを認定し、事故時の収入が少なくとも定年まで
維持されて減収がないとまではいえないと判示した。

裁判所は以上の事情を総合考慮し、60歳までは事故前年である平成6年の
年収631万0800円を基礎として40%の喪失率を認め、60歳から
67歳までは、復職後の平成9年度の賃金センサス産業計企業規模計男子
労働者学歴計61歳の平均年収464万1900円を基礎として56%の
喪失率を認めた。

b 分析
本裁判例は、消防局職員の定年60歳までの喪失率について、7級相当の
56%ではなくこれより低い40%と認定している点が特徴的である。
この点、本裁判例は、将来の昇級昇格が困難となる可能性や中途退職の
可能性があるとはいえ、復職し、しかも、復職後に事故前とほぼ同額の
年収を維持しているという点を重要視して上記判断を導いたものといえよう。




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