裁判例⑮名古屋地判平成19年5月8日(自保ジャーナル第1696号)

裁判例⑮名古屋地判平成19年5月8日(自保ジャーナル第1696号)
年齢: 24歳(事故時)
性別: 男子
職業: 専門学校生・アルバイト(事故時)。事故後正社員として就労。
傷害内容: びまん性軸索損傷等
自賠責等級
高次脳機能障害5級2号、視力障害・視野障害8級、左上肢の機能障害5級6号、
左膝関節の機能障害12級7号、長管骨の変形障害12級8号、
外貌醜状14級11号(併合2級)
比較基準喪失率: 100%
本判例等級: 同上
本判例認定喪失率: 90%
概要: 24歳男性について、事故後障害者枠で正社員として就労していること
等を考慮して、90%を認定した。

a 上記認定に至った理由
裁判所は、後遺障害等級について、「受傷後の状態、症状の推移及び医師の
診断等によれば、本件事故による傷害及び高次脳機能障害の程度は極めて重度で
あったと認められる」とする一方で、①「その後、リハビリテーションにより、
同人の身体機能は相当程度向上し、食事、整容等の日常生活動作について、
部分的には一人で行いうる」し、②「高次脳機能障害についても、
感情の起伏はほとんどみられず、周囲の状況に応じた適切な会話をすることが
可能で、規則正しい生活を送り、収入に相応する働きではないにしても、
単純な作業は可能であると認められるから、同人には、常時介護が
必要ということはできない。」③「もっとも、同人は、上肢の機能のうち、
右手薬指しか有効に機能しないこと、日常生活では、随時原告花子による
介助が不可欠であること、動作に時間がかかり、複数の事柄を同時に
行うことはできず、新たな事柄を習得するためには、介助者による適切な
指導や時間がかかることを考慮すると、同人は、随時介護を要する」もので
あるとし、後遺障害等級第2級を認定した。

そして、労働能力喪失率については、①原告が実質的に使用できる指は
右手薬指のみであることから、原告は手を使った細かい作業はできないし、
②記憶障害により、複数の事柄を同時に処理すること、新しいことを
学習することは困難であるから、労働能力喪失率は100%に極めて近い
ということができるとする。他方で、原告が③会社に「障害者枠で採用され、
現在も正社員として就労し、月額12万8,000円の給与を得ていること」、
④「不自由ながらもパソコンのマウスを操作することもできること」を理由に、
⑤「障害者枠での就労が継続することは確実ではない」ことを考慮したとしても、
労働能力喪失率は90%とするのが相当であると判示した。

なお、原告は、「自賠責保険の等級認定は誤りであり、後遺障害等級は
第1級に該当すると主張し、その根拠として、前記等級認定は右上肢に
関する判断を脱漏している」と主張する。

しかし、裁判所は、「原告の右上肢に関する状況を考慮しても、原告は、
一人で通勤し、勤務時間中特段の介助を要せずに生活が可能であるから、
常時介護を要するということはでき」ないとして原告の主張を退けた。

b 分析
本裁判例は、自賠責と同様に併合2級(喪失率100%相当)を
認定しながらも、その後独自に喪失率を検討し、自賠責の等級認定を
下回る90%を認定した点に特徴がある。通常よりも低い喪失率を
認定したのは、単純作業が可能であることや、現に正社員として
就労していることを重視したためであろう。障害者枠での就労継続が
不確実であることを考慮しつつもそのような判断をしている点は参考になろう。




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