裁判例⑭京都地判平成16年2月18日(自保ジャーナル第1572号)

裁判例⑭京都地判平成16年2月18日(自保ジャーナル第1572号)
年齢: 38歳(事故時)
性別: 男子
職業: 学習塾教務職(事故時)
傷害内容: 外傷性くも膜下出血、右頭部挫傷、右大腿骨転子下骨折、
左脛腓骨骨折等
自賠責等級: 高次脳機能障害5級2号、右股関節の機能障害12級7号、
左下肢短縮13級9号(併合4級)
比較基準喪失率: 92%
本判例等級 高次脳機能障害7級4号、右股関節の機能障害12級7号、
左下肢短縮13級9号(併合6級)
本判例認定喪失率: 67%
概要: 38歳男性について、当初の症状固定の診断以後、精神症状が
相当程度改善していることに加え、原告が本人尋問の期日に出頭しなかった
事情をも考えあわせ、67%を認定した。

a 上記認定に至った理由
原告は、自賠責の認定した等級(併合4級)に相当する92%の喪失率を
主張した。
他方、被告は、①平成12年の症状固定診断以降、カルテの記載上かなり
症状が改善しており、②そうであれば原告の現在の症状につき鑑定等の方法で
吟味する必要があるにもかかわらず、本人尋問期日の不出頭という原告の
非協力により、被告側が立証を事実上行うことができないという点は、
斟酌されるべき事情であるなどとし、原告の症状が相当程度回復している
ことを前提に判断されるべきと主張した。

裁判所は、まず自賠責保険が原告の精神症状を5級2号と認定したことに
ついて検討し、「症状固定診断当時の原告の症状に照らすと、原告は、
作業能力、論理的思考、器用さの低下のため、他人の頻繁な指示がなくては
労務の遂行ができず、また、集中力の低下のため、労務遂行の巧緻性や
持続力において平均人よりも著しく劣る状態にあったものと推認されるから、
自賠責保険が、原告の精神症状が後遺障害等級5級2号に該当すると
判断したこと自体は適切であったというべきである。」と判示した。

その上で、裁判所は、症状固定診断以降の原告の症状について、
①症状固定前の複数のカルテには、医師が原告の症状をどのように
理解すべきか迷っていたことを窺わせる記載があること、②症状固定の
約5ヶ月前の時点で、医師が注意力を中心に症状が改善する可能性はあると
思われる旨診断していたこと、③症状固定の約6ヶ月前に実施された
脳波検査では、びまん性に遅いアルファ化がみられたことから軽度異常と
診断されたものの、症状固定直後の時点では正常範囲内と診断されたこと、
④原告は、症状固定から1年6ヶ月後、以前症状固定診断を担当した医師の
診察を受けた際、「この1年間、自宅でひたすら数学の図形の問題を
解いていた、自分でも、だいぶ知能指数が向上し、回復したように思うと
説明し、」一方、同医師も「症状固定診断時に比べ、表情があり、
反応も早く、会話もスムーズになっている、自発的な発言も多い、
当初人格変化と思われた無為自閉性、発動性の低下は現在改善が
見られている、複雑な計算もできるようになったとのことで、知能指数も
向上した印象であると、若干の驚きを込めて、カルテにその所見を
記載している」ことなどの事情にかんがみると、原告の症状は
「現時点では相当程度回復している可能性が高いものと考えられる」
と判示した。

さらに、⑤原告の症状が相当程度回復している可能性が高いにもかかわらず
「原告が本人尋問の期日に出頭せず、また、鑑定の実施も事実上不可能と
なったため、原告の現在の状態を認識することが甚だ困難な状況にある」
という事情も考慮し、「前記の自賠責保険の認定をそのまま採用することは、
相当でないと言わざるを得ない」とした上で、7級4号に該当すると判示した。

b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級について、症状固定診断以後の回復を理由に、
自賠責認定より低い等級を認定した点に特徴がある。そして、症状固定以後の
回復を認定する根拠としては、医師のカルテ等の書面が重視されていることが
窺われる。また、症状固定後の回復可能性があるにもかかわらず、
原告の非協力により原告の症状を再度吟味する機会が失われたことも
考慮されている点が特徴的である。




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