裁判例⑬東京地判平成12年12月12日

裁判例⑬東京地判平成12年12月12日
(自保ジャーナル第1387号)
年齢: 21歳(事故時)
性別 :男子
職業: 大学生
傷害内容: 脳挫傷、頭蓋骨骨折、急性硬膜血腫
自賠責等級: 高次脳機能障害5級2号
比較基準喪失率: 79%
本判例等級: 不明
本判例認定喪失率: 60%
概要: 21歳大学生が、自賠責認定高次脳機能障害5級2号を残した
事案につき、左手に軽度の振せん以外異常は見られず四肢の運動麻痺も
ないが、会話の声も小さく、認知障害が軽度に残存し、就職等にも努力が
要するものとし、労働能力喪失率を60%と認定した

a 上記認定に至った理由
裁判所は、①四肢の運動麻痺はなく、左手に軽度の振せんを認める以外は特に
異常はなく、歩行や日常生活動作の障害は認められないこと②会話中の声が
小さく、認知障害、脱抑制、発動性の低下などによる意欲や
コミュニケーション上の障害が軽度に認められること③事故後に卒業論文を
提出し、日常生活に支障はないが、就職の点では筆記試験に合格しても
面接試験で不採用になるなど未だに安定した職には就けず、職業訓練校に
通うなど努力はしているものの現時点において就職の見込みは立っていないこと
④感情抑制ができず、コミュニケーションをうまく取れないため対人関係でも
問題を起こしがちであることから、「原告は、家庭内における日常生活には
支障はなく、潜在的な知的能力はあるが、社会の中で適応し、自己の能力を
発揮する、とりわけ仕事に就くことには今しばらくの努力を要するものと
認められ、また、就職した際も安定して就業できるかは疑問であり、原告の
担当できる職務内容もおのずから相当程度限定されざるを得ないと思料される」
と判示し、原告が本件事故当時大学生であり、大学卒業後は当然大学で
身につけた専門的知識等を活用して社会に貢献し、右貢献に相応しい収入を
得られたであろうことからすれば、後遺障害による労働能力喪失率は、
原告の日常生活上の不都合よりも相当大きなものと評価すべきであるとして、
労働能力喪失率60%と判示した。

b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害について具体的な等級に言及することなく、
自賠責認定等級を下回る労働能力喪失率を判示している点に特徴がある。
「後遺障害による労働能力喪失率は、原告の日常生活上の不都合よりも
相当大きなもの」と判示したうえで、自賠責認定等級を下回る60%の
喪失率を認定していることからすると、コミュニケーション上の障害が
軽度に過ぎず、潜在的な知的能力がある点を重視したものと思われる。




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