裁判例⑪大阪地裁平成18年11月16日(自保ジャーナル第1700号)

裁判例⑪大阪地裁平成18年11月16日(自保ジャーナル第1700号)
年齢: 18歳(事故時)
性別: 男子
職業: 高校生(事故時)
傷害内容: 急性硬膜外血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折等
自賠責等級: 高次脳機能障害3級3号、嗅覚障害12級、
顔面醜状14級(併合2級)
比較基準喪失率: 100%
本判例等級: 同上
本判例認定喪失率: 95%
備考: 18歳男性について、今後一定の収入が得られる可能性があることを
考慮して、95%を認定した。

a 上記認定に至った理由
原告は、治療経過、後遺障害等級が併合2級と認定されていること、
現に人格の変化及び認知障害が合わさって社会生活適応能力の障害が大きく、
改善の見込みのない状況であること等から判断して、労働能力喪失率は
100%であると主張した。

他方、被告は、①「性格変化」については、易怒性等は特に母に対して
見られること、②「作業遂行能力面での障害」については、カルテ上に
記載されているアルバイト、修学状況、リハビリ等での通院状況、
職業リハビリの状況、就職先探しの状況などからみて相応の能力があること、
③原告は自動車を運転しておりそれに必要な判断力があると見られること、
④原告は本人尋問の際、1時間以上にわたり、主尋問、反対尋問のいずれにも
丁寧かつ真摯に証言し、その内容においても大きな矛盾はなく、また、
その内容においても労働に対する意欲を感じられたこと、⑤長谷川式
知能テストが30点満点中27点であり、また全IQが58から96まで
回復しており、将来の回復の可能性は大きいこと、⑥現在でも指導監督する
者さえいれば労働は可能であること等の事情を考慮し、等級は5級2号、
労働能力喪失率は79%であると主張した。

裁判所は、①原告が入院中も退院後も家族に暴言を吐いたり刃物を向けたり、
家財を損傷したりすること等があったこと、作業療法報告書ではストレス耐性が
低いとされ、バイトでのトラブル内容から感情コントロールの低下もあると
されていること、②原告が事故前に働いたことのあるコンビニエンスストアの
雇い主はいろいろな問題を大目に見てくれていたにもかかわらず限界で
あるとして辞めざるを得なくなったこと、③原告は自動車の運転自体は
しているが、治療中から約2年9ヶ月の間に、加害事故2件、
自損事故5件を起こしていること、④原告の本人尋問の際、
「だらしがないことキレることなど自己の問題点を述べ、家族への暴言暴力に
ついて認めつつも、表情等を変えることが無く恥じたり反省している様子は
窺えず、就職先を探すことについて自動車の運転適正がある旨述べる等、
そのニュアンスとしては正常な状態とは思えないものがあった」こと等を
認定した。

その上で、原告は、「ストレス耐性が低く、易怒性、飽きっぽさがあり、
キレる時には粗暴な言動に及ぶものであり、そのような自己の状況は
把握しているが、自分自身では適切な対応ができていないし、リハビリも
続かない状況であり、現に、普通のアルバイトは続かなかった」ことに
加えて、②「脳損傷の状況が相当重いものと見られる」ことからして、
自賠責が「高次脳機能障害について3級3号としていることについて
(併合2級の結論を含め)、首肯できる。」と判示した。

次に、労働能力喪失率については、①「就労意欲自体はある」、
②「事故後に働いたコンビニエンスストアの雇用主のような後見的な
環境があり、しかも、就労内容が、対人的な交渉が少なく随時的で、
出来高に応じるなど従量的であるようなかなり限定的なものであり、さらに、
原告がリハビリ等を通じて持続性を獲得できれば、一定の収入が得られる
可能性がある」とした上で、原告の現状と①②の可能性とを考慮して、
労働能力喪失率を95%と判示した。

b 分析
本裁判例は、高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の3級3号
(併合2級:喪失率100%)としながら、その後独自に喪失率を検討し、
自賠責の等級認定を下回る95%の喪失率を認定した点に特徴がある。
通常よりも低い喪失率を認定した理由は、①原告が複数のアルバイトを
試みるなど就労意欲自体はあること、②以前の就業先の雇用主のような
後見的な役割を果たす雇用主の下で就業する可能性があること、
③原告の年齢が比較的若年でありリハビリ等による持続力の回復を
期待できることなどを考慮した点にあるものと思われる。




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