裁判例⑩岡山地裁倉敷支部平成18年11月14日(自保ジャーナル第1680号)

裁判例⑩岡山地裁倉敷支部平成18年11月14日
(自保ジャーナル第1680号)
年齢: 28歳(事故時)
性別: 男子
職業: 不明
傷害内容: 頭部打撲、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、右頬骨骨折、
両側慢性硬膜下出血脳挫傷、びまん性軸索損傷等
自賠責等級: 高次脳機能障害3級3号、右同名半盲9級3号(併合2級)
比較基準喪失率: 100%
本判例等級: 高次脳機能障害5級2号、右同名半盲9級3号(併合4級)
本判例認定喪失率: 92%
備考: 28歳男性について、症状固定後に後遺障害が改善していることを
理由に、4級相当の92%を認定した。

a 上記認定に至った理由
裁判所は、①症状固定後における各種検査(改訂長谷川式簡易知能評価スケール、
HTP描画テスト)の結果が概ね改善傾向を示していること、②症状固定後の
診断結果を記載したカルテ等には、記憶力、易刺激性、衝動性、意欲・自発性、
持続力・持久力がある程度改善したことを示す記載があること、
③日常生活能力もある程度回復していること、④医師が、症状固定以降に
改善しており、今後も改善する可能性がある旨の見解を出していること等の
事情を総合して、症状固定日とされている平成13年11月13日時点では
3級3号該当程度であったが、現時点(口頭弁論終結時)においては
5級2号(併合4級)程度であると判示した。

b 分析
本裁判例は、前記①ないし④の事情を総合考慮した上で、症状固定後に
後遺障害が改善しているとして自賠責の認定した等級よりも低い等級を
認定している点に特徴がある。

また、3名の医師の意見に分析を加えている点にも特徴がある。

すなわち、本裁判例は、まず、「脳外傷による精神症状等についての
具体的な所見」について、①平成13年8月29日付けA医師作成のもの、
②平成14年3月27日付けB医師作成のもの、及び③平成15年7月9日
付けC医師作成のものを比較し、①と②ではほとんどの項目で改善している
とされているのに対し、②と③ではほとんどの項目で大きく悪化し、
③は②のみならず①よりも悪いものとされている点をあげ、この点は
不自然な変化というほかはなく、③を作成したC医師が他の医師と比べて
特に厳しい基準に基づいて所見を述べたものと解さざるを得ず、
C医師の意見は後遺障害が改善しているかどうかの参考にならないと
判示している。

さらに、本裁判例は、労働能力に関する3名の医師の見解についても、
C医師の意見は他の医師と比べて厳しい基準に基づいて見解を述べた
可能性がある点を指摘してC医師の意見を排斥し、ある程度の労働能力の
存在を認める他の2名の医師の見解を採用し、「現時点においては、
周囲の配慮の下で特に軽易な労務を行う能力は有しているというものと
理解すべきである」と判断している。

本裁判例において、このような医師らの見解に対する判断は、
自賠責認定よりも低い等級・喪失率を認定したことに、少なからず影響を
与えたものと思われる。




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