裁判例⑧横浜地判平成18年11月8日

裁判例⑧横浜地判平成18年11月8日
(自保ジャーナル第1676号)
年齢: 52歳(事故時)
性別: 男子
職業: 会社員
傷害内容: 脳挫傷、頭蓋骨骨折、右第四指不全断裂、右橈骨遠位端骨折、
両膝挫創、右膝前十字靱帯損傷、右手関節・右手指拘縮、右外傷性視神経症
自賠責等級: 高次脳機能障害3級3号、右視野欠損13級2号、
左膝関節機能障害12級7号、右手指機能障害11級9号(併合2級)
比較基準喪失率: 100%
本判例等級: 高次脳機能障害5級2号、右視野欠損13級2号、
左膝関節機能障害12級7号、右手指機能障害11級9号(併合4級)
本判例認定喪失率: 92%
概要 :自賠責では高次脳機能障害3級等併合2級後遺障害を残し
復職したものの、2年で解雇された52歳男子会社員について、
「単純な繰り返し作業をすることはできるが、新しい作業や職場に対する
適応性にかけており、就労の維持には職場の理解と援助が必要である」
として、高次脳機能障害は5級(併合4級)とし、労働能力喪失率は
92%と認定した

a 上記認定に至った理由
原告は、高次脳機能障害は3級3号に該当し、併合第2級の後遺障害を
負ったと主張した。
他方、被告は、①WAIS-R検査所見で著名な改善がみられること
②原告が事故後元の職場に復帰していること③労災では後遺障害等級
第8級の認定にとまっていることなどを指摘し、原告の高次脳機能障害は
後遺障害等級第9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)が相当であり、
仮にこれより重いものと評価されるとしても、後遺障害等級第7級4号
(神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服する
ことができないもの)を上回るものではありえないと主張した。

裁判所は、①原告が「人と話をしていてもすぐに忘れる。自分で判断する
能力に欠け妻に依存しがちである。」と述べていること、②原告が
自家用車と電車を乗り継いで一人で通勤していたこと、③復職後は書類の
ファイリングなどの仕事を単独でしていたが、集計作業などは補助者が
必要であったこと、④通勤だけではなく買い物の際も自家用車を
運転していることなどを認定したうえで、「原告は、単純な繰り返し
作業をすることはできるが、新しい作業や職場に対する適応性には
かけており、就労の維持には職場の理解と援助が必要であるから、
原告の高次脳機能障害は、特に軽易な労務以外の労務に服することは
できないものとして、後遺障害等級第5級2号に相当するという
べきである。」と判断した。

b 分析
本裁判例は、自賠責等級認定3級(併合2級)の高次脳機能障害の後遺障害を
残した事案において、高次脳機能障害を5級相当(併合4級)と認定し
92%の労働能力喪失率を認めた点に特徴がある。3級3号
(労働能力喪失率100%)の高次脳機能障害は「自宅周辺を1人で
外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、
介助なしでも日常の動作を行なえる。しかし、記憶や注意力、新しいことを
学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい
障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」であることが
必要であるところ、原告は事故後元の職場に復帰して軽作業に従事して
いるため、「一般就労が全くできないか、困難なもの」とは認めにくい。
裁判所が、原告の高次脳機能障害の程度を5級相当として、併合4級相当の
92%の喪失率を認定したのは、原告が復職したという事実を
重視したためと考えられる。




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