裁判例④横浜地判平成12年8月24日

裁判例④横浜地判平成12年8月24日
(自保ジャーナル第1370号)
年齢: 53歳(事故時)
性別: 男子
職業: やきとり屋・大人のおもちゃの店の経営
傷害内容: 脳挫傷、外傷性てんかん、左前腕骨骨折、左尺骨偽関節、
左膝複雑靱帯損傷、左腓骨神経麻痺、歯牙欠損
自賠責等級: 高次脳機能障害7級、その他は不明
比較基準喪失率: 56%
本判例等級: 高次脳機能障害5級2号、左尺骨偽関節・左膝同様関節
及び左腓骨神経麻痺12級7号(併合4級)
本判例認定喪失率: 92%
概要: 自賠責では、高次脳機能障害7級の後遺障害を残した53歳男子に
ついて、「原告の労働能力は、本件事故による後遺障害により高度に
喪失したと認められるが、軽作業程度の労働をする能力は残存しているものと
認められる」として、高次脳機能障害は5級2号(併合4級)とし、
労働能力喪失率92%を認めた

a 上記認定に至った理由
原告は①自賠責の認定等級が7級となったのは、脳外科関係の不充分な
診断書に基づいて認定されたからであること②鑑定の結果によれば、
原告は知的能力を要する知的労働は不可能であるが、第三者による十分な
指導と援助の下で行なう精神・心理的ストレスの少ない軽作業について
短時間行なうことは可能とされており、医師も「誰かの監督下にあれば、
封筒はりやコード巻きなどの仕事をアルバイト的に家でやることは可能である」
と診断しているが、他人の充分な指導と援助の下での精神的・
心理的ストレスの少ない短時間のみ行なう単純な軽作業を仕事の中で現実に
想定することは極めて困難であることから、原告が就労しうる労働は
存在しないとし、高次脳機能障害は2級3号(少なくとも3級3号)
に該当すると主張した。

他方、被告は、①本件事故に起因する意識障害については、本件事故後に
軽快改善されたことが明らかであること②自賠責認定が7級となったのは、
詳しい診療記録等がない状態のものであり、てんかん発作も全く現出して
いないことも考えあわせれば原告の後遺障害は9級10号を越えるもの
ではないと主張した。

裁判所は、鑑定の結果、知的能力を要する労働や複雑な人間関係が存在する
ような仕事は不可能であるが、精神的・心理的ストレスが少ない単純な
作業は短時間可能であるとされていることから、「軽作業程度の労働を
する能力は残存しているものと認められる」とし、高次脳機能障害に
ついて5級2号に該当するとして、喪失率を92%と判示した。

b 分析
本裁判例は、「他人の充分な指導と援助の下で行なう、精神的・
心理的ストレスが少なく、かつ、短時間で終わる単純な軽作業」は
存在しないため、原告の労働能力喪失率は100%であるという原告の
主張を退け、自賠責では7級と認定された高次脳機能障害を5級2号
(併合4級)と認定し、92%の喪失率を認めた点に特徴がある。
裁判所は、「総合的に判断して知的労働は不可能であると思われるが、
単純な軽作業は不可能ではないと考える。」「労働に関しては知的能力を
必要とする高度のものや、複雑な人間関係が存在するような仕事は
不可能と思われ、精神・心理的ストレスが少ない単純な作業で短時間なら
可能と思われる。しかし、充分な本人への指導や援助が必要と考えられる。」
という鑑定の結果を重視しているものと思われる。




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