裁判例③名古屋地判平成18年1月20日

裁判例③名古屋地判平成18年1月20日
(自保ジャーナル第1649号)
年齢: 26歳(事故時)
性別: 女子
職業: 会社員
傷害内容: 脳挫傷、肺挫傷、下顎骨骨折、右股関節脱臼骨折、
両鎖骨骨折、肋骨骨折、右動眼神経麻痺
自賠責等級 高次脳機能障害7級4号、右動眼神経麻痺併合11級
(併合6級)

比較基準喪失率: 67%
本判例等級: 同上
本判例認定喪失率: 75%
概要: 26歳女子大卒会社員が自賠責認定高次脳機能障害7級等併合6級
後遺障害を残した事案につき、法廷での尋問結果等をふまえ、自賠責同様
高次脳機能障害は7級、併合6級が相当と認定したが、就労を維持するためには
非常な困難が伴うとし、労働能力喪失率は5級との中間値に近い
75%と認定した

a 上記認定に至った理由
原告は、記憶力、持続力、集中力及び問題解決能力が著しく低下したため、
原告の高次脳機能障害は5級2号(併合4級)に該当し、少なくとも80%の
喪失率が認められるべきと主張した(主位的には喪失率92%を主張)。

他方、被告は、①自賠責において7級4号に認定されていること②尋問が
円滑にすすんでおり、意思疎通能力、問題解決能力の半分以上を喪失した
状態にあるとまでは認められないこと③記憶力に問題があるにせよ
「軽易な労務」には服することができる状態にあること④原告は症状固定後、
自らの易怒性を認識しそれを適切に抑えられるようになっていること等から、
原告の高次脳機能障害の後遺障害等級は7級が相当と主張した。

裁判所は、①いったんは従前の仕事に復帰したが、仕事の内容について
記憶を失っており、新しい仕事も覚えられなかったために退職し、現在は
高次機能障害者が集まる作業所で袋詰めなどの単純作業に従事していること
②事故後もIQが110前後あり正常域に属していること③本人尋問に
おける供述には記憶がない旨の回答が多かったものの、質問をよく理解し
意味を取り違えるようなことはなかったことからして、記憶力及び記銘力を
除く原告の能力はかなり良好に保たれていることが認められるとしたうえで、
「原告の後遺障害等級は、高次脳機能障害が7級4号に該当し、
右動眼神経麻痺が併合11級に該当し、これらを併合し、併合第6級に
該当するとの自賠責損害調査事務所長の判断を採用するのが相当である」
と判示した。

労働能力喪失率については、「(原告の)記憶力及び記銘力の障害の程度が
強いことを考慮すると、実際に一般の就労を果たしてこれを維持するには
非常な困難が伴うことが認められる。」と認定したうえで、5級との
中間値である75%を原告の労働能力喪失率とするのが相当であると
判示した。

b 分析
本裁判例は、原告の高次脳機能障害の等級を自賠責認定と同様の7級
(併合6級:喪失率67%)としながら、その後独自に喪失率を検討し、
自賠責の等級認定を上回る75%の喪失率を認めた点に特徴がある。
裁判所が通常より高い喪失率を認めたのは、本人尋問における供述内容
及び供述態度から判明した原告の記憶力・記銘力の障害の程度が強く、
就労の継続には非常な困難が伴うことが容易に予想されることを
重視したためであろう。




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