裁判例における常時介護と随時介護の判断

裁判においては、自賠責の後遺障害等級に拘束されることなく、
訴訟上顕れた証拠に基づき、裁判官の自由な心証でその介護の要否、
程度が判断される以上、自賠責で認定された等級と異なる等級に相当する
後遺障害であると判断されることもある
(大阪地判平15・1・27自保ジャーナル第1497号)。

これは、自賠責の認定は少ない形式的資料によるので、ある程度確実な
ものしか認定できないが、訴訟ではカルテその他すべての医療記録が
取得できることも影響していると考えられる。

また、高次脳機能障害者、特に若年の高次脳機能障害者は、症状固定とされた
時以降に実際には症状が改善していることもあり得るため、裁判の基準時で
ある口頭弁論終結時には、自賠責の認定がなされたときよりも低い
後遺障害等級相当の障害であることもあり得る。

もっとも、自賠責でなされた等級認定通りの認定がなされることが裁判上は
多いといえる。

ただ、自賠責で2級であっても、随時介護だけでなく常時看視の必要性を
認め将来の介護費用を算定しているものもあり(裁判例①横浜地判平
18・5・15自保ジャーナル第1662号、裁判例②名古屋地判平17・5・31
自保ジャーナル第1597号等)、結局個々の具体的事案によって介護の内容、
程度を判断しているのである。

裁判例①横浜地判平成18年5月15日
(自保ジャーナル第1662号)
年齢: 19歳(事故時)
性別: 男子
傷害内容: 脳室穿破、外傷性くも膜下出血、左大腿骨骨折、顔面裂傷等
自賠責等級: 高次脳機能障害等2級3号
被害者側の状況:
記銘力障害、抽象的認知障害、注意力障害、遂行機能障害、判断力低下、
意欲低下、性格変化、尿意・便意のコントロール障害、運動性構音障害、
左片麻痺等の後遺障害
性的逸脱行為、暴力、暴言等の突発的な問題行動がある。
介護内容: 常時介護者が付き添う内容の介護
認定された介護費用: 日額1万円

本裁判例は、被害者(原告太郎」の症状固定後の精神状態、日常生活状況等に
照らすと、原告太郎については、食事や歩行の身体的介助等の身体面での
介助はさほど必要ではないものの、食事の支度や服薬指示については常に
介護を要するほか、日常生活上必要とされる種々の行為について、
介護者による適切な指示ないし介助がなされることが必要であり、特に、
原告太郎が外出して社会との接触を持つ場面においては、突発的な問題行動
(性的逸脱行動、暴力、暴言等)がありうるため、これに備えて、介護者が
常に付き添い、適時適切な声かけ、指示、抑制等を行う必要があるとした。

 して、原告太郎に必要とされる介護は、上記のとおり、適時なされる
ものであるから、その意味では、常時の介護でなく、随時の介護というべき
ものであるとしながら、原告太郎の障害が上記のようなものである以上、
原告太郎の日常生活上必要とされる介護がいつ必要とされるか、
また外出時における問題行動がいつ生じるかという予測は困難であるから、
結局、これに備えて常時介護者が付き添うことが必要であると言わざるを
得ないとし、原告太郎については、常時介護者が付き添う内容の介護が
必要であると認めた。

裁判例②名古屋地判平成17年5月31日
(自保ジャーナル第1597号)
年齢: 19歳(事故時)
性別: 男子
傷害内容: 脳室穿破、外傷性くも膜下出血、左大腿骨骨折、顔面裂傷等
自賠責等級: 高次脳機能障害等2級3号
被害者側の状況: 認知障害としては記憶・記銘力障害、集中力障害、
遂行機能障害、判断力低下、病識欠落等、

人格変化(行動障害)としては、感情易変、不機嫌、攻撃性(易怒性)、
暴言・暴力、幼稚、羞恥心の低下、多弁(饒舌)、自発性・活動性の低下、
病的嫉妬・ねたみ、被害妄想等の症状
介護内容: 常時の看視ないし促し
認定された介護費用:
症状固定後4年間:近親者日額7000円
上記以後介護人父67歳まで:
①年間240日は日額合計1万5000円(職業介護人日額1万3000円、
近親者日額2000円)
②年間125日は近親者日額7000円
介護人父67歳以降:職業介護人日額1万7000円

本裁判例は、被害者(原告太郎)に常時介護が必要か否かについて、
原告太郎の現在の症状及び介護の状況から、「身体的な面では、入浴も排泄も
一応自分で行うことができ、介護が必要であるとすれば外出時の歩行の際に、
同人が転倒しないように支える必要がある程度であって、この面だけを
捉えれば、外出時のみの随時介護で足りるということもできる」とした。

しかし、「精神面及び性格面から検討すると、原告太郎には自発性が
欠如しているから、適切な促しがなければ、食事、更衣等の日常生活に
必要な動作を行うことができないし、何より、原告太郎はその記銘障害のため、
自分のしたことをすぐに忘れてしまい、煙草の火の始末を忘れる等、
その行動を看視していなければ火事等の重大な事態を招く危険性が高い。

また、その易怒性のために、他人に予測が困難な突然の行動によって
自己又は他者を傷つける可能性もある。そして、このような危険が生じる
可能性は、原告太郎の起床から就寝までの大半の時間にあると考えられる」
とした。

そして、介護の態様には、

①介護者にとって余り体力を要しない看視・促しのようなものと、
②介護者にとって体力を要する介助のようなもの

の二種類があると考えられるとし、原告太郎の場合には、「日常生活の
ほとんどの場面において介助までは要しないが、上記のように常時の
看視ないし促しが必要であるから、介助の態様の問題を別とすれば、
随時介護では足りないというべきであり、常時介護が必要である」
と認定した。




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