労働能力の評価

高次脳機能障害には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、
社会的行動障害などが含まれる。

すなわち、高次脳機能障害として事故によって被害者に生じた障害を
考慮するとき、認知障害だけではなく、行動障害および人格変化を
原因とする社会行動障害についても判断されている。

高次脳機能障害は、労災基準に挙げられる4能力を見ても分かるように、
様々な神経心理学的症状を包括的に指す言葉であり、被害者によって
それらの喪失の程度も被害者ごとによって異なるものであり、その中でも、
特定の作業をこなすことができても、人格変化等により他人との社会生活を
送ることができない者もいる。

そのような場合には、ある特定の作業(下記平成19年報告書でも
挙げられているような、インターネットでホームページを眺めたりすること
などにとどまらず、やや複雑な作業も含む)をこなすことができたとしても、
そのような点のみを捉えて軽度の等級認定をするべきではない。

その作業がこなすことができたとしても、高次脳機能障害としての
社会的行動能力の低下のためにその能力を活かす環境に受け入れられることが
できないのであれば、その作業をこなすことができる能力はゼロに等しく
なってしまうからである。

このように、高次脳機能障害においては、社会行動能力の喪失の有無・程度が
重視されなければならない。

このような問題点を踏まえて、平成19年報告書でも、以下のように
まとめられている。

① 著しい知能低下や記憶障害は、就労能力を当然のことながら低下させる。
しかし神経心理学的検査で知能指数が正常範囲に保たれている場合でも、
行動障害および人格変化に基づく社会的行動障害によって、
対人関係形成などに困難があり、通常の社会および日常生活への適応に
難渋している場合には相応の等級評価をすべきである。

② 社会的行動障害によって就労が困難な場合でも、TVゲームを
操作したり、インターネットでホームページを眺めたりするなどの能力を
有する場合がある。日常生活報告欄に、これらを行っていると
記述されている場合、これをもって就労可能と判断すべきではない。

③ 学校生活に求められる適応能力と職業生活に求められる
職務遂行能力には違いがある。
学校では自分が好まない対人関係を避けることができる場合が多い。
しかし、就労場面ではこのような選択ができにくいために対人的葛藤を
起こしやすくなる。
したがって、学童・学生について将来の就労能力を推測するとしたら、
学業成績の変化以外に、非選択的な対人関係の構築ができているかなどを
評価し、これを労働能力に勘案すべきである。

④ 知能指数が標準範囲であっても、社会的行動障害が阻害要因となって
就労困難な場合があることをすでに述べた。
同様に、一般交通機関を利用した移動能力と労働能力喪失の程度は
必ずしも一致しない場合がある。
併せて、脳外傷を示す画像所見が軽微な場合でも、労働能力がかなりの
程度損なわれている場合がある。

⑤ 18歳未満の児童で受傷前に就労していた被害者については、
一般の就労者と同様に取り扱うこととする。




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