加害者の不自然、不合理な供述

裁判例1 
横浜地裁平成12年5月11日判決

当時の慰謝料額2000万円
増額慰謝料額2800万円(800万円アップ!)

どのような事故だったか?

被害者は、9歳の女の子です。
両親に愛され、2人の姉妹と大変仲の良い、将来が楽しみで元気な小学4年生でした。
狭い通学路を駆け足横断した被害者に、加速して進行してきた加害オートバイが衝突し、
被害者が死亡した事案です。

事故後、加害者は倒れている被害者に大声で怒鳴り、救護もせずに煙草を吸っていました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者の事故直後の不誠実な態度
②謝罪不十分、無責任な態度
③裁判での不合理な供述
④被害者の若い年齢、家族構成

解説
交通事故は、ほんの小さなミスで誰もが起こす危険があるものです。
加害者としても、交通事故を起こしたこと自体は取り返しのつかないことですが、
その後の対応として、救護措置をとったり、裁判等で真剣な反省の態度を示し、
誠意ある対応をすることは十分可能なはずです。

それだけに、被害者や遺族としては、事故後の加害者の対応の仕方次第では、
精神的なダメージも大きく変わってくるといえます。

本事案では、加害者が、倒れる被害者に対して、「なんだよう!」と大声で怒鳴りつけ、
被害者を救護することもなく、更にはその場で煙草を吸うという非常に許し難い
非常識な態度をとっています。

また、加害者は、事故後も遺族に対し心から謝罪することもなく、無責任な態度を
とり続けていました。

そして何より、本事案の特徴として挙げられるのは、加害者が、民事裁判の尋問で、
自分の責任を軽減するために不合理な供述をしたということです。

もちろん、裁判においては、自分の権利を守るために正当な主張をし、それに沿う
供述をすること自体は当然認められており、加害者が自分に有利な供述をしたから
といって、それだけで慰謝料の算定に考慮されるべきではありません。

しかし、本事案では、加害者は、客観的証拠と矛盾する不合理な弁解に終始したのです。

加害者の事故後の対応に加え、裁判での不合理な供述により、遺族がさらに精神的な
苦痛を負ったことは容易に想像がつきます。

このように、本事案では、小学4年生にして先を絶たれた被害者の無念や悲しみ、
姉妹の精神的ショック、加害者の事故直後の対応もさることながら、慰謝料が大幅に
増額された理由としては、加害者が真実を明らかにすべき裁判においてまで、
自分の責任を軽くするために、不合理な弁解に終始したということが重要な
ポイントといえるでしょう。

裁判例2
名古屋地裁平成13年9月21日判決

当時の慰謝料額約160万円
増額慰謝料額200万円(40万円アップ!)

どのような事案だったか
大学に勤務する被害者は、深夜に乗用車で交差点を直進中、信号無視の加害者が
運転する乗用車に衝突され、被害者の車は全損となり、被害者も全身打撲の傷害を負い、
1年8月余りにわたり通院を余儀なくされました。

この事案では、事故後、加害者が警察に「青信号で交差点を通過した」との虚偽の
供述をしたために、10ヶ月以上も被害者が加害者として取り扱われて捜査が進められ、
被害者はこのために胃炎、円形脱毛症を発症しました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者の捜査機関に対する虚偽の供述

解説
刑事手続きにおいて、被疑者・被告人は、憲法38条第1項や刑事訴訟法198条第2項、
311条第1項により、黙秘権が保証されています。

しかし、これは、被疑者や被告人が言いたくないことを無理に言わなくて良いという
趣旨にとどまり、当然に虚偽の供述をする権利が認められているわけではありません。

しかし、本事案では、赤信号で交差点に突入した加害者が、そのことを認識していたにも
かかわらず、捜査段階においては終始「青信号で交差点を通過した」との虚偽の供述を
続けていたのです。

これにより、加害者は事故の被害者として扱われ、反対に被害者は、10ヶ月以上にも及び、
赤信号で交差点に突入した疑いをかけられ、意に反して加害者・被疑者として取り扱われ、
取り調べの対象とさせられたのです。

本事案では、最終的には被害者の無実潔白が明らかとなり、加害者も最終的には
刑事裁判においては自分が赤信号で交差点に突入したことを認めました。

しかし、10ヶ月以上にわたり被疑者として犯人扱いされた被害者の精神的苦痛は、
想像を絶する程に大きいといえるでしょう。

実際、被害者は胃炎、円形脱毛症にかかり、裁判所も事故とこれら症状の因果関係を
認めています。

裁判所は、加害者に制裁を加える目的での慰謝料までは認めませんでしたが、
加害者が虚偽の供述を続けたために10ヶ月以上もの間犯人扱いされた被害者の
精神的苦痛を考慮して、40万円の慰謝料増額を認めました。




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