びまん性軸索損傷

脳実質は、頭蓋骨の中で髄液腔の中に浮かんでいるような状態で存在する。
交通事故等で頭部を強打した場合、力学的に並進運動をしている脳実質が
頭蓋骨内面で破壊を受ける。

また、脳実質は、灰白質や白質、血管などで構成され、その性状は
一様ではなく、実際の頭部外傷時の脳の動きは単純に一方向ではなくて
大なり小なり回転性の運動が作用する。この回転性の加速度衝撃の際、
脳実質に大きなひずみが生じて組織的に剪断力が働き、この力は周辺に
行くほど大きくなる。

このような頭部の回転加速度衝撃によって生ずる広範囲の脳損傷を
びまん性脳損傷といい、びまん性軸索損傷は、加速度衝撃による軸索の
伸展と断裂が基本的病変である。軸索が直接断裂する場合と、伸展された
軸索の機能的障害による二次的な断裂が生じる場合がある。

びまん性軸索損傷の臨床像は、頭部外傷直後から意識を失うことが特徴である。

重症の場合は、脳幹機能障害を伴い、深昏睡状態が除脳硬直や瞳孔の異常、
呼吸の不整等とともに生じる。

片麻痺や眼筋運動障害なども脳幹症状である。

なお、びまん性軸索損傷と局在性脳損傷との混合型の存在も認められ、
例えば、急性硬膜下血腫とびまん性軸索損傷の合併が認められる。

そして、びまん性軸索損傷は、画像的には、全般性脳室拡大と脳表の
脳萎縮として確認できる(画像所見についての詳細は、「本章Ⅴ.4.ウ」にて
後述する。)。

これは、損傷を受けた軸索が清掃、除去され、その結果、白質の体積は
減少して代償的に脳質が拡大するためである。

また、軸索が変性に陥ると、神経細胞も逆行性に変性して脳皮質の萎縮が
進行することによる。

さて、びまん性軸索損傷が軽度であれば、意識消失期間も短く、
目が開く頃には話が通じる。

しかし、びまん性軸索損傷が強いときは、目が開いても、暫くは意思の
疎通ができない。

発声したり、自己表現をしたりしない。やがて体を動かすことが可能と
なっても、記憶力も悪く、聞いたこともすぐに忘れてしまう。

周囲とのコミュニケーションも悪く、ひどい時には尿便は失禁状態であり、
道徳心も欠如する。

やがてよくなるにつれて運動能力が回復しても、ひどいときには理解力が
ないために周囲と衝突し暴力を振るったりする。

よくなる場合は、見当識が戻り色々な神経症状も軽くなり、次第に元の
人格に戻っていく。

一般的な身体のリハビリは半年程度までであり、一応自宅に退院することに
なるが、後遺症が残る場合には記銘力が戻らず、適当に状況を理解せずに
活動するため、目が離せず介護が必要となる。社会復帰できても、周囲は
依然と人格が変わったことに気付かないため、トラブルが生じる。

理性の欠如、状況判断の未熟などから感情が易変し、怒りっぽくなり、
幼児的で暴力的になる。

受傷前の性格と一変してしまい、生活の管理、金銭管理、社会適応ができず、
ひどい場合は施設収容が必要となる。

他方、軽症例では、物忘れや短気など、後述の高次脳機能障害が程度に
応じて現れる。

びまん性軸索損傷の最重症形は遷延性昏睡であり、最軽症例は脳震盪である。




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