裁判例⑤

裁判例⑤ 大阪地判平成20年7月31日(自保ジャーナル第1787号)
年齢 59歳(固定時)
性別 男子
事故状況
被害者運転の自転車は、時速70キロメートルないし80キロメートルで走行中の
被告運転の加害車両に衝突され、加害車両は被害者をボンネットに跳ね上げたまま、
衝突地点から約40メートルの地点まで進行した上で、被害者を地面に落とした。
加害車両のフロントガラスも天井も大きく損壊した。

原告の主張する傷害内容
脊髄不全損傷、脊椎の多発骨折(第6・第7頸椎棘突起骨折、第1胸椎破裂骨折)等。
自賠責等級 3級3号
裁判所認定等級等
3級3号 喪失率100パーセント
喪失期間:9年間(平均余命の2分の1)

原告が主張する後遺障害の内容
事故後、両下肢痙性不全麻痺及び両下肢知覚障害、排尿・排便障害が発症した。
被告の主張

①画像所見(圧迫所見や髄内輝度変化)がない。
②本件事故に近接した時期に麻痺や知覚障害が現れていない。事故から2年ないし
3年経過後に上記障害が生じることはない。

【認定の理由】
裁判所は、上記事故状況から、本件事故により原告が受けた衝撃は、脊髄(不全)損傷が
生じたとしても不自然ではない程度のものであったと認定し、原告の第1胸椎椎体が
完全にひしゃげてしまっていた状態に鑑みれば、その椎体の後ろ側にある脊髄の一部が
損傷を受けた可能性は高いと認定した。

また、原告に生じている両下肢痙性不全麻痺等の障害は、脊髄(頸髄及び胸髄を含む。)
の索路症状と認められること、排尿・排便障害があることから、これらの原告に
発症している症状も、脊髄不全損傷を推認させるものであるとした。
これに対し、脊髄損傷が存在しないとの被告の上記主張に対しては、まず、

①画像所見(圧迫所見や髄内輝度変化)がないとの主張については、「脊髄不全損傷は、
知覚や運動が完全に麻痺する完全損傷とは異なり、損傷の部位・程度、損傷形態等により、
代表的とされる各種症状の有無・程度には広範囲の差異があるとされ、画像で明確に
捉えられない脊髄不全損傷があっても矛盾しないと言えるから、画像所見のないことが
決定的なものとはならない」とし、

②本件事故に近接した時期に麻痺や知覚障害が現れていないとの主張については、
「平成13年5月29日には上下肢に反射亢進が認められる(証拠略)など、
本件事故に近接した時期に全く麻痺や知覚障害がなかったとまでは言えない。また、
脊椎固定隣接障害や脊髄不全損傷により、遅発的に麻痺が進行したり、損傷脊髄由来の
疼痛が悪化することは臨床医がしばしば経験するところである(証拠略)から、
仮に本件事故に近接した時期に麻痺や知覚障害が現れていなかったとしても、
原告太郎が脊髄不全損傷の傷害を負ったと推認することを左右するものではない」として、
被告の主張を排斥した。

【本裁判例の検討】
本裁判例は、事故の状況(原告が受けた衝撃の程度)、原告の骨折箇所及び症状から
脊髄不全損傷の存在を認定し、画像がないことや症状が遅発したことについては、
脊髄不全損傷であることと矛盾しないものとし、画像所見がない場合にもその他の
客観的状況から脊髄不全損傷を認定したことに特徴がある。




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