脊髄損傷の存否が問題となる場合

脊椎を骨折した場合など、脊髄を損傷したことが画像からも明らかである場合や、
事故直後から四肢麻痺といった症状が生じ、その麻痺の箇所も脊髄の損傷箇所と
対応するなど、神経学的所見からも脊髄の損傷が明らかであるというような場合には、
脊髄損傷の存在及び当該事故と後遺障害との因果関係が認められることに争いは
少ないものと思われる。

しかし、画像上脊椎の骨折・脱臼といった骨傷が明らかではなく、脊髄損傷の所見も
明らかではない場合には、脊髄損傷の存否から争いになることが多い。

ところで、脊髄損傷の症状は、脊髄全横断面にわたって神経回路が断絶した完全麻痺
(損傷)と、一部でも保たれた不完全麻痺(損傷)に分類されるところ、後者の脊髄を
完全には損傷しなかった場合を不全損傷という。

不全損傷の場合には、神経が完全には断裂していないため、知覚や運動が完全に麻痺する
完全損傷とは異なり、損傷の部位・程度・損傷形態等により、代表的とされる各種症状の
有無・程度には広範囲の差異があるとされている。

この不全損傷の中でも、最も脊髄損傷の存否が問題となることが多いものが
「中心性脊髄損傷」と呼ばれる傷病であり、脊髄の辺縁に存在する索路(白質)よりも
中心部にある髄節(灰白質)が主に損傷される障害とされ、脱臼や骨折を認めない
非骨傷性頸髄損傷に多く認められる。

このような脊髄損傷の存否が問題となる場合、
①当該事故の態様が脊髄を損傷する程度のものかどうか、

②実際の症状が、通常脊髄損傷により生じうる症状との同様かどうか(症状の内容や
麻痺の範囲の相違、症状の遅発・悪化等)、

③既往症が存在する場合にその内容(既往症と相俟って脊髄損傷が生じたと認められる
場合や、逆に、痺れ等の症状は事故を原因とした既往症の悪化による神経症状であると
して、脊髄損傷は生じていないと判断されつつも、事故と後遺障害自体との因果関係が
認められる場合がある)

等が判断の要素となることが多い。

以下、脊髄損傷の存否が問題となった事案について、肯定した裁判例
、否定した裁判例それぞれ紹介する(なお、表中、文中の等級は当時の等級表
によるものである)。




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