裁判例⑬(高次機能障害)

裁判例⑬横浜地判平成21年12月17日(自保ジャーナル第1818号)
年齢 17歳(事故時)
性別 女子
職業 女子塗装工
傷害内容
脳挫傷、びまん性脳損傷、左末梢性顔面神経麻痺、左聴力低下、左大腿骨骨折、
左兎眼性角膜炎、左外傷性視神経症、歯牙損傷
自賠責等級 高次脳機能障害7級4号
比較基準
喪失率 56%
本判例等級 9級
本判例認定喪失率 45%

概要
17歳女子塗装工が、自賠責認定高次脳機能障害7級4号を残した事案につき、
運転免許を1回で取得し、人材派遣会社に登録、仕事に従事していることなどから、
労働能力喪失率を45%と認定した

ア 認定の理由
原告は、7級4号に認定された高次脳機能障害について、知能の低下の事実や、
事故後の日常生活状況の変化、事故後の就労状況(復職してから1ヶ月後くらいで
解雇され、派遣会社に登録したものの、2日出勤したところで派遣を打ち切られて
しまったり、派遣自体が終了してしまうなどしたと主張した。)から、少なくとも
7級相当の後遺障害が存在する(56%の労働能力喪失)ことは明らかであると主張した。

これに対して被告は、知能検査が低いことについては、本件事故に起因するもの
というよりは、元々の素養によるものとの見解を報告者が示していること、
主治医の見解には高次脳機能障害について触れられておらず、後遺障害診断書においても、
記載した医師において記銘力障害の残存すら認められていないこと本件事故から
約2年度に普通運転免許を取得しており、試験に1回で合格していることなどから、
原告の後遺障害はせいぜい9級10号程度であると主張した。

これらを受けて裁判所は、
①脳神経外科の診療録には、後遺障害としての記銘力低下をはじめとして、
高次脳機能障害に関する記載がないこと、

②後遺障害診断書に短期記銘力の低下を認める記載があるものの、この元となる
記載は診療録中にはないことから父作成の日常生活状況報告を参考にしたものと思われること、

③事故の約2年後に合格者平均点を超える点数で学科試験を合格して普通運転免許を
取得していることから、重度の記銘力の障害が存在するとは考えにくいこと、

④事故前の塗装工の仕事が勤まらなかったことは認められるものの、派遣会社に
登録して働いており、派遣会社から派遣を打ち切られたといった事実がないこと

等から「軽易な労務以外の労務に服することができない」状態にあることは
認められるものの、それが全て本件事故による後遺障害によるものなのかは
必ずしも明らかではない部分があるとして、原告の労働能力喪失率を45%と認定した。

イ 本裁判例の検討
本件では、父作成の日常生活状況報告が提出されたり、父母が証人として証言を
しているものの、裁判所はこれらの内容について、「疑問点も多く、損害賠償請求の
上で不利益に働く可能性のあることについては、ありのままの事実を証言していない
のではないかとの疑いを払拭できない」として、日常生活状況報告(およびそれを
参考にしたものと推測される診断書等)を、信用できないとまではいえないとしても、
全面的に採用できるかについて慎重な検討が必要であると述べており、結果として
証明力は必ずしも高いとは言えないとしている。

その上で、就労状況、運転免許の取得等、事故後の生活状況を詳細に検討して、
上記結論を導いている。




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