裁判例⑫(高次機能障害)

裁判例⑫大阪地裁平成21年3月18日(自保ジャーナル第1817号)
年齢 10歳(事故時)
性別 男子
職業 小学生(事故時)
傷害内容 脳挫傷、頭蓋底骨折、急性硬膜外血腫、びまん性軸索損傷等
自賠責等級 高次脳機能障害7級4号、下肢短縮13級9号(併合6級)
比較基準
喪失率 56%
本判例等級 高次脳機能障害について9級
本判例認定喪失率 45%

概要
症状固定時15歳男子について、脳損傷は重大な程度には至っておらず、
順調に回復した結果高次脳機能障害が残ったものと判断して、9級と7級の
中間程度の45%を認定した。

ア 認定の理由
原告は、損害保険料率算出機構から、脳外傷による高次脳機能障害のほか、
右片麻痺による運動障害、感覚障害等の身体性機能障害が残存していることに
ついて、総合評価によって7級4号に該当し、左大腿骨骨折に伴う下肢の
短縮障害については13級9号に該当するとして、併合6級との認定を受けた
ことから、原告の労働能力喪失率は、少なくとも同等級の参考喪失率である
67%であると主張した。

これに対して被告は、高次脳機能障害については検査結果を見ても知能に明らかな
低下がなく、重篤な症状が窺われないこと、右片麻痺については、原告が事故後の
中学高校時代にバスケット部に所属しており、体育も出来ると述べていたことから、
7級に該当するとは言えず、また左下肢の短縮障害については、同障害が原告に
与えている影響は極めて小さいとして、原告の労働能力については35%程度と
判断すべきと主張した。
裁判所は、これらの主張を踏まえ、

①原告には脳MRI検査の結果、脳萎縮・脳室拡大が認められないことから、
軸索損傷の程度は比較的軽度なものであり、脳波検査の結果が正常であったことからも、
その後の回復も比較的順調であったと考えられること、

②検査結果の推移、中学校時代の成績評価が中程度であり、いったんは公立の高校へ
進学していることなどから、原告は本件事故により記憶力に障害が生じたため、
本来経時的に開発されるべき能力が十分に開発されることのないまま固定化し、
理解力等の問題解決能力に障害が残存している状態にあると考えられること、

③一定の性格変化が認められるものの、他方でクラブ活動でチームスポーツである
バスケットボールを続けていた上、学校生活において友人関係でトラブルがあるなど
他者との意思疎通の能力に問題があるような事実が認められず、年齢を経るにつれ、
性格変化の傾向が低減していること

などから、原告の高次脳機能障害は、頭部外傷により、当初重篤な状態に陥ったが、
脳損傷は重大な程度には至らず、順調に回復したものの、高次脳機能障害として
後遺障害が残存するに至ったものと判断し、高次脳機能障害の程度については
9級程度と判断した。

そして、右片麻痺については、12級程度の軽微なものとまでは言えないが、
いわゆる「軽度」の片麻痺が想定している程度の状態に至っているとも言えないと
判断し、また、下肢の短縮障害についても、学校生活を送る上で不便であることが
認められるものの、就労への影響は大きいものとは考えにくいと判断して、
結局原告の労働能力喪失率については、これらを総合して、9級と7級の中間程度の
45%と判断した。

イ 本裁判例の検討
本裁判例では、総合評価や、併合の方法を用いて等級認定がされている場合、
当該認定等級は必ずしも現実の労働能力の喪失程度を反映するものとはなって
いないことから、実際の生活実情を具体的に検討する必要があるということを前提に、
原告が事故時年少者であったことから、MRIや脳波検査などの各種検査の結果のほか、
進学の実態、学校生活をどのように送ることができているか(部活動、学校生活に
おける他者とのコミュニケーション等)を重視して上記結論を導いている。




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