裁判例②(高次機能障害)

裁判例②東京地判平成18年3月2日(自保ジャーナル第1650号)

年齢 25歳(事故時)
性別 女子
職業 ガラス工房勤務(事故時)
傷害内容 左前頭骨骨折、両側前頭葉脳挫傷、脳内出血、
後頭部挫創、左肩甲骨骨折等

自賠責等級 高次脳機能障害5級2号、嗅覚障害12級、
醜状障害7級12号(併合3級)

比較基準
喪失率 79%(5級)
本判例等級 併合3級(高次脳機能障害については5級)
本判例認定喪失率 92%

概要
25歳女子について、自賠責の認定と同様の等級を認定したが、
労働能力喪失率については、5級相当の79%ではなく、4級相当の
92%を認定した。(なお、嗅覚障害、醜状障害については労働能力への
影響を否定し、後遺障害慰謝料で考慮した。)

ア 認定の理由
原告は、自賠責において併合3級に認定されている他、さらに、てんかん、
嗅覚脱失、左眼の視野狭窄後遺障害もあり、感情的な傾向、自己中心的な
傾向にみられる情緒障害、人格障害のほか、発現時期の予測できない術後
皮下膿瘍や脳膿瘍の可能性、てんかん、高次脳機能障害、嗅覚脱失、
外貌醜状等が相互に重複し、あるいは相乗して精神障害をきたしている上、
人格水準の低下としての器質的精神病により症状固定時の自賠責保険の認定
されたときよりも悪化し、新たな就労能力制約条件となっていることを理由に
併合2級、喪失率100%を主張した。

これに対して被告は、通院期間中の人格水準の低下は顕著ではないこと、
易怒性は事故後の様々な精神的ストレスが関与している可能性があること、
てんかんは抗てんかん剤によってコントロール可能であること、皮下腫瘍の
再発可能性が低いことを理由に、9級と喪失率35%を主張し、仮に自賠責認定
どおり高次脳機能障害が5級2号に相当するとしても、喪失率は79%とすべき
であると主張した。

裁判所は、原告に人格障害があり、易怒性、易興奮性等が認められ、意欲も減退
していること、現在は仕事をしておらず、アルバイトもてんかん発作のため、
あるいは対人関係などに疲れ、自ら無理であるとして辞めていることから、
労働能力が相当程度喪失しているとしつつも、各種検査の結果、原告の知能は正常で、
精神心理検査の結果も良好であり、症状固定の診断をした医師も、原告が従事
していた仕事について、抗てんかん剤投与中で発作の生じる可能性はあるが、
状況が許せば可能と考えていたこと、症状固定前からアルバイトへの従事を試みており、
当時は、自ら就職したいという意欲が窺えたこと、1人暮らしをし、金銭の
やりくりをして家事をこなしていたことに鑑み、100%労働能力を喪失した
とは認め難いと判示し、労働能力喪失率を92%と認定した。

イ 裁判例の検討
原告の後遺障害は、自賠責から併合3級に認定されているが、嗅覚障害、醜状障害
については、労働能力への影響が否定されやすい障害であり、高次脳機能障害自体の
等級としては5級2号に認定されている(参考喪失率79%)。

しかし、それでも原告の労働能力喪失率が92%と認定された背景には、現状、
高次脳機能障害、てんかん等による対人関係への悪影響が顕著であり、そのため本人に
労働への意欲が全くないか、あるいは極めて低い状態となってしまっており、
現実的な就労が極めて困難だったことがあるものと思われる。




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