名古屋地判平成17年2月9日(自保ジャーナル第1603号)

【事案の概要】
原告が、損保料率機構によって、神経系統の機能、精神の障害について、
脳の器質的損傷によるものとして、自賠責等級第7級4号に認定されたことから
(その他併合9級に認定された左下肢の機能障害と併せて、全体としては
併合6級に認定された。)、これを前提とした損害額の主張をしたところ、
被告が、神経系統の機能、精神の障害について、原告の頭部画像に明らかな
萎縮等の異常所見が一切認められず、神経心理学的な検査所見によっても
知能の低下等は認められないなど、何らの医学的所見がないことから、
異議申立書における原告の就労状況に関する主張及び勤務する会社から
提出された就労状況についての資料という一方的な主張に基づくものであり、

また、原告の記銘力障害は、ある程度の回復は可能であり、一般事務や単純労働であれば
他人の援助なくこなすことは可能であることから、労働能力の67%を喪失した
とすることは実態に合致しないと主張して争った事案。

【裁判所の判断】

原告は、本件事故により、被告車と停止していた車両との間に挟まれ、
頭部を被告車のフロントガラスに打ち付けて、意識不明となり、
知多厚生病院搬入時には、意識レベルが極めて低く、本件事故から約10日後に
やっと意識レベルが改善されたこと、「脳挫傷、外傷性くも膜下出血」等と診断されたこと、
原告には、脳MRI(単純、造影)検査において、「①脳梁後半部の萎縮と同部内の
結節性信号異常域(陳旧性軟化巣を示唆する)が認められる。周囲の脳質周囲深部白質の
軽度萎縮も認められる。びまん性軸索損傷後性変化が示唆される像である。
②また小脳上半分皮質と上小脳脚の萎縮を認める。びまん性軸索損傷では上小脳脚にも
障害が及ぶことも多いので、原因としてもっとも考えられる。」として、
「脳梁後半部、小脳上半分皮質と上脳脚萎縮及び脳梁後半部内陳旧性軟化巣
;びまん性軸索損傷後性変化が示唆される」と診断されていること(証拠略)、また、
「①画像診断において、脳梁後半部に特徴的な行為の抑制障害(脳梁性失行)は
認められないが、本人の訴えでも、注意力障害、殊に分配的注意の障害を認め、
2つ以上のことを同時に行う上で困難があり、②全般的なびまん性軸索損傷に伴う
変化として、記銘力障害、言語性記憶障害(意味記憶の障害、見当識障害、短期記銘力障害)
が認められる。」と診断されていること(証拠略)、さらに、原告の勤務する会社の社長は、
前記のとおり、原告の後遺障害により仕事に支障が出ていることを具体的に述べており、
これらの事情は前記の検査結果等にも整合するものであることがそれぞれ認められる。
これらの事実に照らせば、自動車保険料率算定会(損害保険料率算出機構)による
前記の後遺障害認定について、これを不合理とすることはできず、原告には
後遺障害等級併合第6級に相当する後遺症が残り、その労働能力の67%を喪失したと
認めるのが相当である

【裁判例の検討】

先に述べたとおり、高次脳機能障害(脳の器質的損傷に基づく神経系統の機能、
精神の障害)の認定に際しては、画像資料上において、びまん性脳室拡大や脳萎縮等の
異常所見が認められることが重視される。

裁判所は、被害者の頭部画像に明らかな萎縮等の異常所見が認められなかった被害者の
症状に関し、受傷当初の意識障害の程度(およびそれを裏付ける受傷状況)や、
被害者に生じた各種障害の内容(各種検査の結果)および具体的に就労上生じている
支障が検査結果に整合することなどを理由に、原告の神経系統の機能、精神の障害が
脳の器質的損傷に基づくものであることを認めた。




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