子に対する影響

裁判例            京都地裁平成6年8月30日判決

当時の慰謝料の基準      270万円
増額慰謝料額         370万円(100万円アップ!)
                 ※後遺症分の推定金額です。
どのような事故だったか?

被害者は事故時39才の主婦です。

被害者の乗った乗用車は、ハンドル操作を誤って対向車線に進出してきた加害車両と
正面衝突しました。

この事故により被害者は、左上腕骨粉砕骨折等の傷害を負いました。
事故から4年後に症状固定となりましたが、左腕に、痛みやしびれ、筋力低下等の
後遺症が残りました(後遺障害等級は12級)

被害者の家族は夫と息子2人ですが、次男(事故当時10才)は脳性麻痺による
重度の身体障害児で、生後4ヶ月から9年以上にわたり、被害者の介護・訓練を
受けながら生活してきました。

訓練は、「ボイタ法」という脳性麻痺の子供に対して行われる訓練法で、
子供に一定の姿勢をとらせて特定の部位を刺激することにより、筋肉の正常な
使い方を誘発するというものです。

理学療法士の指導により、母親が家庭で1日4回(1回15分~30分)行う
ということです。

このような介護と訓練は、次男の身体障害の進行を最小限に防ぎ、身体機能の
発達を促すために行われていました。

ところが前記のとおり、被害者は、事故により左上腕に筋力低下等の後遺症を
負ったため、それまでのように次男の介護や訓練をすることができなくなりました。

医師からも、次男を繰り返し抱きかかえるなど左腕に大きな負担がかかる作業は
禁止されていました。

訓練不足で次男は運動不足となり、体重が増えたり体が硬くなる、手首や足首に
変形を来たすなどの影響が出ました。

その後も手首や足首の変形は進み、さらに肩肘にも変形を来たし、背骨の湾曲が
進行するなどの影響も出ました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①事故により介護・訓練ができなくなり、次男の身体機能が後退したこと
②被害者の傷害・後遺症の内容・程度、治療期間等
  
解説

交通事故は被害者本人だけでなく、家族の人生にも大きな影響を及ぼします。
成長を楽しみにしていた子供を亡くす親もいれば、働き盛りの父親を亡くす
家族もいます。

また、事故により被害者が重度の障害を負い、家族が介護に専念しなければ
ならない場合もあるでしょう。

家族の苦しみや悲しみ、経済的な負担など、交通事故が被害者家族に与える
影響は様々といえます。

本件の被害者には、被害者の介護を頼りとする次男がいました。

被害者は、脳性麻痺の障害を負った次男に対し、身体障害の進行を少しでも
防ぐため、必死の訓練をしていたようです。

1回15分から30分の訓練を1日に4回も行い、それを毎日続ける
というのですから大変なことでしょう。

そのほかに食事や入浴等の介護もあるでしょうから、まさに付きっきりといえます。

それを9年間も続けてきたのに、事故により十分な介護・訓練ができなくなった
被害者の心情は、言葉では言い表せないでしょう。

実際、訓練不足で次男の身体機能は低下したということですから、なおさらです。

判決も、慰謝料算定にあたりこの点を重く見ました。

被害者が9年間にわたり介護・訓練を続けてきたこと、
にもかかわらず事故により十分な介護・訓練ができなくなり次男の身体機能が
低下したことを指摘し、この点を他の事情とは独立に取り上げて、
「慰謝料として100万円を加算するのが相当」としたのです。

このように特定の事情のみ取り上げて、その点について、「○○円加算」と
加算金額をはっきりと示すのは、裁判例としては珍しいといえます。

被害者側としては、子供や家族に対する影響が重大であることをきちんと
主張立証することにより、慰謝料増額の可能性があるということになります。




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