裁判例19 東京地判平成18年10月26日(交民集39巻5号1472頁)

裁判例19 東京地判平成18年10月26日(交民集39巻5号1472頁)
年齢: 60歳(症状固定日)
性別: 女子
事故日: 平成10年12月24日
原告の主張する傷害内容: 頸椎捻挫、第5・第6頸椎間椎間板ヘルニア
自賠責等級 :3級3号
裁判所認定等級
右上肢7級4号と右下肢12級との併合6級
喪失率67パーセント、喪失期間14年間(平均余命の2分の1)
原告が主張する後遺障害の内容
頸髄不全損傷によって、右上下肢に痺れが生じた。日常生活では常時車椅子を
使用し、夫の介助を受けている。

身体障害者等級1級
被告の主張

原告の本件事故による後遺障害は重く見ても9級相当程度であり、
介護を要するものではない。

【裁判所の判断】
裁判所は、鑑定結果をもとに、以下のように事実を認定し判断した。

第1に、症状経過と画像所見について、一般に損傷された頚髄においては
損傷された部位に通常の脊髄の信号強度より高信号の領域が認められる
ところ、原告にはそれが全く認められないこと。

また、受傷ないしは発症後数年経過した時点で撮影されたMRIでは、
損傷された部位より頭側や尾側の脊髄が正常の脊髄形状を示さず、
面積も著しく小さくなってしまうものであるが、原告の受傷後6年経過した
時点でのMRIでは、上位及び下位頚椎部も脊髄の形状や大きさは
全く正常であり、変形や萎縮といえるような所見は全く認められていないこと。

そして、こうした所見が認められないことからは、当初軽微な頚髄損傷を
受傷し、その後、頚髄に対する圧迫要因として動的要因が関与して症状が
悪化していったということも考えられないこと。

第2に、症状経過と画像所見からみた頸髄損傷の診断の妥当性について、
頚髄損傷は一般的に、

①受傷後早期に最も強い麻痺症状、

②その後は全く改善することなく経過又は改善傾向を示すかのいずれか、

③慢性期になると病状は日によって変動することもあるといった
経過を辿ること。

また、原告のような非骨傷頚髄損傷の特徴は、
①高齢者などの加齢性変化による脊柱管狭窄状態が素因として存在する
患者に認められる、

②頚部の過度の後屈が強制されて受傷しやすく顔面の挫傷を伴うことが多い、

③麻痺としては当初四肢麻痺のこともあるが、麻痺は上肢中心に認められた
特に手指などの上肢遠位に強く、下肢の機能は、急速に回復することが多く、
最終的には上肢優位の麻痺が遺残することが多いこと

を特徴とする中心性頚髄損傷の麻痺型を呈することが多いこと。

しかし、原告は、経過中に明らかに麻痺症状が悪化しているし、原告には
脊柱管狭窄状態がほとんど認められない上、仮に本件事故によって原告に
頚髄損傷が起こるとすれば、画像所見上、第5・第6頚椎間だけであり、
その場合は、上肢の痺れは3ないし5指と前腕の尺側のみで、肩や肘関節に
関係する筋力は障害されず正常であるところ、原告の上肢の症状はそのように
限定されていないこと。

そして第1第2の事実から、原告には頸髄損傷は生じていないと判断した。

もっとも、原告は、本件事故直後から右上肢の痺れ感などの症状を強く
訴えており、当初からその機能も低下していたこと及び右下肢の痺れ感等も
事故後早期に訴えていることからすると、原告春子の右上肢の麻痺と
右下肢の痺れについては本件事故と因果関係があるとして、右上肢について
7級4号、右下肢について12級12号を認定し、併合6級と判断した。

【本裁判例の分析】
本裁判例は、脊髄損傷で生じるとされる症状(中心性頸髄損傷の場合の症状も
含めて)と原告の症状を詳細に検討した上で(要素②)、脊髄損傷を否定した。

もっとも、脊髄損傷を否定しつつも、原告に生じている症状の一部と
本件事故との因果関係は認められるとして、後遺障害併合6級を認めた。




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