裁判例15 京都地判平成16年6月16日(自保ジャーナル第1561号)

裁判例15 京都地判平成16年6月16日(自保ジャーナル第1561号) 
年齢: 52歳
性別: 女性
事故日: 平成10年4月20日
事故状況: 原告が自転車に乗車中、被告運転の原付自転車に追突された。
原告の主張する傷害内容: 頭部外傷Ⅱ型、頭部皮下出血、外傷性頚椎症等
自賠責等級: 14級10号
裁判所認定等級: 3級、喪失率100パーセント、喪失期間64歳までの
10年間

原告が主張する後遺障害の内容
本件事故により頸髄損傷の疑い・左片(上下肢)麻痺・転換性障害の後遺障害を
残した症状固定。

上記後遺障害は、左上肢の用を廃したもとして後遺障害等級5級級6号に、
また下肢の用を廃したものとして後遺障害等級5級7号に該当し、
併合して3級に該当する。

被告の主張
原告は頸髄損傷を受傷したとは言えない。
原告の症状は心因的要因に起因するものであり、事故との因果関係はない。
仮にこれが認められるとしても、心因的要因の関与が極めて大きいから、
公平の観点から過失相殺類推適用により80ないし90%の減額をすべきである。

【裁判所の判断】
原告は、本件事故により頭部外傷Ⅱ型等で549日間入院し、頸髄損傷、
左片(上下肢)麻痺、下肢用廃、転換性障害等の後遺障害を残したものとし、
後遺障害併合3級を主張した。 

これに対し被告は、頸髄損傷を受傷したといえず、原告の症状は心因的要因に
起因するものであり、事故との因果関係はないと主張しこれを争った。

 裁判所は、
①原告には受傷直後に知覚があり、麻痺があったとは窺えないこと、

②病的反射は見られず、X線写真、CT、MRI検査上、頸髄損傷を疑わせる
異常所見が見られなかったこと、

③頸椎第4・第5間、第5・第6間に突出部があったとしても、
これが片麻痺の原因とはなり難く、麻痺知覚異常を訴える部位は
上記変性部の神経支配域とも一致しないこと

から、本件事故により頸髄損傷を受傷したと認めることはできないと
判断した。

他方、裁判所は、原告が本件事故の翌日以降、左上肢痛、挙上不可、
左上下肢運動不全、知覚障害を訴えていることからすれば、本件事故により
上記症状が発現したものというべきであり、事故との因果関係を認めることが
相当と判断した。そのうえで、裁判所は、症状の長期化、憎悪化については
原告の心因性の素因がかなりの程度寄与しているものと認めるほかはないと
判断した。

【本裁判例の分析】
本裁判例は、頸髄損傷の存否の判断にあたり、原告の主張する症状と一般的な
頸髄損傷の他覚的所見との差異があること(要素②)、および原告の症状に
ついて心因性の転換性障害の可能性が高いこと等から頸髄損傷を
受傷したことは認められないと判断した。

もっとも、裁判所は、頸髄損傷は否定したものの、原告が主張する症状が
自己の翌日以降発現していたことから、原告の症状は事故を契機として
発症したと認定し、事故との因果関係を肯定し、原告の主婦としての
労働能力の100%喪失を認めた。

また、本判例は、原告の後遺障害は、心因性の素因がかなりの程度
寄与していると認める他はないと判断し、50%の素因減額を適用した。

さらに、裁判所は、心因性の素因が寄与して症状の長期化・憎悪化を
きたしていることを考慮したうえで、症状と事故との因果関係が
認められる期間を10年間と限定したことが注目される。




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