裁判例14 東京地判平成16年2月26日(自保ジャーナル第1537号)

裁判例14 東京地判平成16年2月26日(自保ジャーナル第1537号)
年齢      48歳
性別      女子
事故日      平成8年9月20日
事故状況
被告運転の加害車両が、交差点に右折進入した際に、進入先道路に一時停止
していた被告運転の被害車両に衝突した。

原告の主張する傷害内容      外傷性頸髄損傷、
外傷性腰部神経根症等

自賠責等級      神経症状9級10号と脊柱変形11級7号との併合8級
裁判所認定等級等
併合10級(神経症状12級と脊柱変形11級との併合)
喪失率27パーセント、喪失期間67歳までの18年間

原告が主張する後遺障害の内容
両上肢・下肢の痛みや痺れ、握力の低下、両上肢の痛覚脱失等の
後遺障害が残り、洋服の着替え等が1人では行えない。

被告の主張
原告の後遺障害は本件事故により生じたものではない。
仮に、後遺障害が生じていても素因減額されるべきである。

【裁判所の判断】
裁判所は、原告の症状について、「原告は、第5頸髄髄節に由来する
上腕二頭筋反射と第6頸髄髄節に由来する腕橈骨筋反射が左右とも
亢進しているが、第7頸髄髄節に由来する上腕三頭筋反射は左右とも
低下している。」「しかしながら、一般に受傷後ある程度経過した
脊髄損傷では、損傷した脊髄由来の反射は消失するが、損傷髄節以下に
由来する反射は亢進し、病的反射の出現を認めるものであるところ、
原告のように、上位随節由来の反射(上腕二頭筋反射、腕橈骨筋反射)が
亢進しながら、下位の第7頸髄髄節由来の反射(上腕三頭筋反射)が
亢進せずに低下しているのは、神経学的に合理的ではないと
いわざるを得ない」とした。

さらに、「原告の反射は、上腕二頭筋反射が右正常、左軽度亢進、
腕橈骨筋反射が左右とも亢進、三頭筋反射が左右とも正常とされ」、
他の整形外科における反射とも異なっているところ、「脊髄損傷は軽度の
浮腫を除けば不可逆的なものであるから、原告の反射の所見はこの点に
おいても合理的な説明が困難である」とした。

また、原告には、手指の病的反射が認められず、下肢の反射については、
足クローヌスが2回認められているものの、2回程度であれば、
脊髄損傷がない(器質的に錐体路の障害がない)場合にも出現するときが
あり、他方、脊髄損傷がある場合に、一度出た足クローヌスがなくなる
ということは考えにくいが、本件手術前に原告に足クローヌスは認められて
いない点にも疑問を感じるとした。

さらに、原告は、徒手筋力テスト(左橈骨筋手骨伸筋以下)が3であったが、
病院の看護記録の平成9年3月17日(入院当日)の欄には、
「左肘関節の痛みがあり、ものをつかむのができないという」とあり、
神経麻痺による筋力低下というよりは、痛みを誘発させないための
防御行動である可能性が高いと考えられるとし、原告には、脊髄損傷患者に
通常見られる膀胱直腸の障害をうかがわせるような症状も一切ないとして、
脊髄損傷の他覚的所見が乏しいことを理由に、脊髄損傷を否定した。

もっとも、本件事故前には、原告に本件事故後に生じたような症状は
全くなかったが、本件事故後に痺れ等の症状が生じ、しかもそれが
長期間継続し、現在も残存しているとし、事故前には、無症状であった
加齢性の変性(頸椎の脊柱管狭窄、後縦靱帯骨化)が、交通事故等の
衝撃により痺れ等を発症させたものと認めるのが相当であるとした。

そして、痺れ等は局部に頑固な神経症状を残すものとして12級10号に
該当し、脊柱変形11級7号と併せて併合10級を認めた。

なお、被告からの素因減額の主張に対しても、通常の加齢性の変性である
ことを理由に否定した。

【本裁判例の分析】
上記裁判例は、原告の症状を詳細に検討し、脊髄損傷の際に通常生じうる
症状と原告の症状が一致しないことから(要素②)、他に証拠がない以上
脊髄損傷は生じていないと判断した。

もっとも、当該事故と既往症の悪化との因果関係を認めており(要素③)、
脊髄損傷が否定されたからといって、後遺障害と事故との因果関係も
否定されるものではないということを示している。




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