裁判例2 大阪地判平成7年3月2日(交民集28巻2号351頁)

裁判例2 大阪地判平成7年3月2日(交民集28巻2号351頁) 
年齢  47歳
性別  男子
事故日     平成元年11月16日
事故状況   被告車が交差点を南東から北へ右折しようとした際、
北から直進してきた原告自転車と接触した。

原告の主張する傷害内容    脊髄損傷を主因とした両下肢麻痺
自賠責等級  判定困難を理由に支払拒否
裁判所認定等級等 神経症状5級2号、喪失率80パーセント、
喪失期間67歳までの20年間

原告が主張する後遺障害の内容
脊髄(胸髄下部損傷)、両下肢麻痺、両下肢痺れ、筋力低下、
起立歩行不可等1級8号

被告の主張
原告の各傷害の原因は、脊髄損傷ではなく、歩行障害を来す先天性奇形体質や
ヒステリー・賠償神経症等の心因的要因であって、本件事故と関係がない。

【裁判所の判断】
本裁判例は、本件事故と原告の四肢麻痺等の後遺障害との間の相当因果関係が
争われた事案である。

原告は、本件事故により、胸腰部を打撲して脊髄(胸髄下部)損傷の傷害を
負った結果、両下肢麻痺、両下肢痺れ・筋力低下、起立歩行不可の後遺障害
(自賠責第1級8号相当)を残して症状固定し、労働能力を完全に
喪失したと主張した。

これに対し被告らは、原告主張の各障害の原因は、脊髄損傷ではなく、
歩行障害をきたす先天性奇形体質やヒステリー・賠償神経症などの
心因的要因であって、本件事故と相当因果関係がないと主張した。

裁判所は、
①原告が本件事故直後、顔面に冷汗をかき、苦痛の症状で
「体に触らないでくれ」と言い、腰部痛および右肘から手先の痛みを
強く訴え、ピリピリした痺れが少し認められたが、これらは脊髄損傷の
初期症状と相当に類似性があること、

②原告は本件事故を機に、自力歩行が相当に困難な状態が発現したと
考えられること、

③原告には胸髄11髄節以下の知覚障害がほぼ一貫して認められて
いること、

④胸髄MRI検査結果自体、外傷による胸髄損傷が生じている可能性を
窺わせる他覚的所見であること、

⑤原告の症状には脊髄損傷の典型的な諸徴候が明確には認められないものの、
脊髄損傷の部位・程度によって右徴候の有無・程度には相当広範囲な
差異があり、画像診断で捉えられない脊髄損傷も存在することから、

上記①ないし⑤を総合考慮すると、本件事故による外力が、原告の脊髄に
損傷などの影響を与え、両下肢麻痺の一因となったことが認められ、
本件事故と原告の両下肢麻痺との間に相当因果関係を認めることが
できるとした。

そのうえで裁判所は、原告が本件事故の後、急性心筋梗塞を発症し
リハビリを行うことが難しい状況となり、筋委縮が著しく進行して
両下肢麻痺が悪化したことから、心筋梗塞発症以降の両下肢麻痺の
悪化については本件事故との間の相当因果関係を認めることはできない
とした。そこで、後遺障害の程度としては5級2号(神経系統の機能
または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することが
できないもの)に該当すると認定した。

【本裁判例の分析】
本判例は、原告が本件事故によって脊髄損傷の障害を負った結果、両下肢麻痺
などの後遺障害(第1級8号相当)を残して症状固定し、労働能力を完全に
喪失したと主張した。これに対し被告らは、原告主張の後遺障害と本件事故
との間の相当因果関係はないと争った。

裁判所は、原告の症状の経過、MRI検査結果、他覚的所見などから
本件事故と原告の後遺障害との間に相当因果関係を認めることができる
とした(要素②)。もっとも、裁判所は、原告が本件事故後心筋梗塞を
発症し、リハビリを行い難い状況となり、両下肢を運動させないことに
より筋委縮が著しく進行して完全麻痺に至ったと認められることから、
心筋梗塞発症以降の両下肢麻痺の悪化については、本件事故との間の
相当因果関係を否定し、後遺障害の程度は5級2号と認定した。

なお、本件は素因減額についても争点となったが、裁判所は、①原告には
本件事故以前から歩行障害をきたす微細な脊髄血管障害などの何らかの
軽度な脊髄疾患が生じており、これが本件事故による衝撃と相まって
脊髄損傷発生の一要因となったこと、及び②原告が自ら積極的に下肢の
運動機能回復に努めようとしない自己の心因要因が寄与したことから、
4割を素因減額した。




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