問題点

脊髄損傷における典型的な症状・所見との齟齬

脊髄損傷、特に頸髄損傷の受傷機転としては交通外傷が最も多いと
いわれていることからも(社団法人日本交通科学協議会
「平成18年度医療からみた交通事故と障害に関する研究」
14頁(平成19年))、交通事故と脊髄損傷とは密接な関係にある
ということができる。

交通事故により脊髄が横断的に完全損傷し、神経が切断された場合には、
その損傷箇所に応じて上下肢の麻痺が生じ後遺障害となる。
麻痺として症状固定するまでの一般的な経過としては、初期には腱反射が
低下・消失し弛緩性麻痺を呈し、ある程度の時間を経過すると腱反射が
亢進し痙性麻痺を呈するとともに病的反射が現れ、その損傷された脊髄の
高位によって、麻痺の範囲や程度が決定されることになる。

そして、脊椎を骨折等し、脊髄を損傷したことが画像からも明らかで
ある場合や、事故直後から四肢麻痺といった症状が生じ、その麻痺の箇所も
脊髄の損傷箇所と対応するというように神経学的所見からも脊髄の損傷が
明らかであるというような場合には、脊髄損傷の存在及び当該事故と
後遺障害との因果関係も認められ、後遺障害等級3級以上が認定される
ことに争いは少ない(裁判になる場合には、金額の問題になろう)
(具体的な損傷部位と症状については、第1章参照)。

しかし、画像上脊椎の骨折・脱臼といった骨傷が明らかではなく脊髄損傷の
所見も明らかではない場合には、脊髄損傷自体の存否が争いに
なることが多い。

そして、この場合には、原告としては、画像等に現れていなくとも脊髄損傷は
存在していると主張し、被告はその存在を争うことになるため、画像等以外の
その他の脊髄損傷を裏付ける事実の判断が争点となる。

そこで、以下では、脊髄損傷の存否及び後遺障害と当該交通事故との間の
相当因果関係が問題となった事案の裁判例を検討する。




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