総論

交通事故による後遺障害が残存する場合には、損害保険料率算出機構が、
自動車損害賠償責任保険・共済(以下「自賠責」という。)における
損害(後遺障害)の調査を行い、当該後遺障害に応じた等級を認定する。
自賠責保険については、労災障害認定基準に準じて後遺障害等級が認定される。

脊髄障害の労災認定においては、「精神・神経の障害認定に関する専門委員会」の
検討結果を踏まえ、平成15年8月8日、厚生労働省労働基準局長により、
「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」
(平15.8.8基発0808002)が都道府県労働局長宛に通達された。
同通達に基づく改定後の認定基準により、

①認定基準の明確性の向上を図る観点から、脊髄損傷に通常伴って生じる
神経因性膀胱障害等の障害も含めて評価すること、②障害認定に当たっては、
麻痺に着目し、麻痺の範囲及びその程度(麻痺の程度については下記の表参照)
により障害等級(下記表の1、2、3、5、7、9、12級)を
認定することとされた。

この麻痺の範囲及び程度について、同通達では、身体的所見及びMRI、
CT等により裏付けられることが必要であるから、主治医の意見書に
記載されている麻痺の症状及び関節可動域の制限等との結果と、麻痺の範囲と
程度との間に整合性があるか否かを確認し、必要に応じて調査を行った上で
障害等級を認定するものとされている。

具体的は、麻痺の症状の欄に弛緩性、関節可動域の制限の欄には麻痺している
部分のいずれの関節も自動運動によっては全可動域にわたって可動させる
ことができる記載されているにもかかわらず、麻痺が高度とされている
場合には、主治医に再度意見を求める等の調査が必要であるとされる。
自賠責保険の後遺障害等級も、かかる労災認定基準に準じ、身体的所見
及びMRI、CT等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度に
より認定される。

なお、脊髄は解剖学的には第1腰椎よりも高位に存在し、第2腰椎以下には
存在しないことから、第2腰椎以下の脊柱内の馬尾神経が損傷された場合にも
上記脊髄損傷の基準が適用されるかが問題となり得るが、馬尾神経が
損傷された場合においても脊髄損傷による障害である下肢の運動麻痺
(運動障害)、感覚麻痺(感覚障害)、尿路機能障害又は腸管機能障害
(神経因性膀胱障害または神経因性直腸障害)等が生じることから、
脊髄損傷に含めて運用される。

脊髄損傷に関連する等級の一覧は下記の別表のとおりであるが、以下、
等級毎に説明する(本章では自賠責保険の判断基準のみの説明にとどめ、
裁判例を踏まえた後遺障害等級ごとの説明は次章以降に行う)。
麻痺の程度に関する表

程度  高度
内容
障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある
上肢又は下肢の基本動作(下肢においては歩行や立位、上肢においては
物を持ち上げて移動させること)ができない

具体例
(ⅰ) 完全硬直又はこれに近いもの

(ⅱ) 上肢においては三大関節及び5つの手指のいずれの関節も自動運動に
よっては可動させることができないもの又はこれに近い状態

(ⅲ) 下肢においては、三大関節のいずれも自動運動によっては可動させる
ことはできないもの又はこれに近い状態

(ⅳ) 上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した一上肢では
物を持ち上げて移動させることができないもの

(ⅴ) 下肢においては、随意運動の顕著な障害により一下肢の支持性及び
随意的な運動性をほとんど失ったもの

程度 中等度
内容
障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある
上肢又は下肢の基本動作にかなりの制限があるもの

具体例
(ⅰ) 上肢においては、障害を残した一上肢では仕事に必要な軽量の物
(概ね500g)を持ち上げることができないもの又は障害を残した
一上肢では文字を書くことができないもの

(ⅱ) 下肢においては、障害を残した一下肢を有するため杖もしくは
硬性装具なしには階段を上ることができないもの又は障害を残した両下肢を
有するため杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難であること

程度 軽度
内容
障害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある
上肢又は下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているもの

具体例
(ⅰ) 上肢においては、障害を残した一上肢では文字を書くことに
困難を伴うもの

(ⅱ) 下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した一下肢を
有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの又は障害を残した両下肢を
有するため杖若しくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの

後遺障害別等級表(平成18年4月1日以降に発生した事故に適用する表)
別表第1
等級: 号数: 内容
第1級: 1号: 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
常に介護を要するもの

第2級: 2号: 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
随時介護を要するもの

別表第2
等級: 号数: 内容
第3級: 3号: 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
終身労務に服することができないもの

第5級: 2号: 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、
特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

第7級: 4号: 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な
労務以外の労務に服することができないもの

第9級: 10号: 神経系統の機能又は精神に障害を残し、
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

第12級: 13号: 局部に頑固な神経症状を残すもの




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ

0120-949-753

このページの先頭へ