神経所見

(1) 誘発テスト
ア Spurlingテスト(スパーリングテスト)
患者を座らせ、頸椎を症状側に後側屈させ、頭部を圧迫し軸圧をかけると、
上肢に根性疼痛が走る((編)日本脊髄脊椎病学会『脊椎脊髄病用語事典』
(以下「事典」という。)p56)。頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症による
椎間孔狭窄などで陽性となる。

イ Jacksonテスト(ジャクソンテスト)
患者を座らせて、検者の片手で頸椎を健側に側屈させ、他方の手を肩の上に
おき下方へ押し下げるテストである。上肢の疼痛が誘発、増悪されれば
頸部神経根症を疑う。

ウ Lhermitte徴候 (レルミッテ徴候)
仰臥位で頭部を他動的に前屈させると、四肢や体幹への電撃様の異常感覚の
放散が誘発される。頸髄障害を伴うことが多く、脊髄視床路あるいは後索の
障害が考えられる。多発性効果症によくみられるが、脊髄腫瘍、
椎間板ヘルニア、頸椎症性脊髄症、髄膜炎などでも出現する。

エ Kemp徴候(ケンプ徴候)
体幹を患側に側屈させつつ過伸展すると臀部や下肢に放散痛が誘発される。
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、椎間関節症などでみられる。

オ 大腿神経伸長テスト(femoral nerve stretch test)
腹臥位で患側下肢の膝を90℃屈曲させ股関節を伸展するように持ち上げると
大腿前面に放散痛が生じる。第3-4より上位の腰椎椎間板ヘルニアで
陽性となる。

カ 下肢伸展挙上テスト(straight leg raising test)
膝関節を伸展させたままで下肢を挙上するとある角度で臀部から下肢後面に
疼痛を訴え挙上ができなくなる。70℃以下を陽性としその際の角度を
記載する。第5腰髄、第1仙髄の神経根の障害で陽性となる。

(2) 反射
反射とは、生体に与えられたある刺激(痛み、摩擦、光など)を感受し、
それに対応して生体が示す一定の反応とされている。

反射現象では、①生体に刺激が与えられ、②これを感知し、③この刺激が
求心性伝導路を伝わって反射の中枢に至り、④ここから運動の指令が
遠心性伝導路を伝わって目的の筋肉に至り、⑤筋肉の収縮が生じるという
一連の反応がみられる。この回路は反射弓とよばれる。主な反射と中枢の
関係は表(スタンダードp19の表3)を参照。

以下、各反射の種類ごとに説明する。
ア 深部腱反射
被験者の腱部をハンマーで軽く叩打して刺激することにより筋肉を急激に
伸展し、防御性の伸縮をみるものである。

反射亢進は反射弓より上位運動ニューロンの障害を意味し、減弱、
消失は下位運動ニューロンを含めた反射弓そのものの障害を示唆する。

ただし、両側性に亢進や減弱がみられる場合は、病的意義がないことも
あるため、必ず両側を比較して左右差をみることが大切である。

イ 皮膚表在反射
皮膚をピンなどで素早く擦り、近傍の筋肉の収縮の有無をみるものである。
その消失は、錐体路障害の重要な徴候である。

反射弓は深部腱反射よりも複雑であり、遠心路は必ずしも求進路と同じ
髄節から出るわけではない。刺激は加重するため、繰り返しにより
出現しやすくなる。

腹壁反射は腹壁をピンで外側から臍(へそ)へ向けて素早く擦ると腹壁筋の
収縮により臍が刺激された側へ偏移する。挙睾反射は大腿の内側面を
上から下へピンなどで擦ると同側の精巣挙筋の収縮により睾丸が挙上する。
肛門反射は、会陰部や肛門周囲をピンなどで擦り、肛門括約筋の収縮を
みるか、肛門に前もって挿入した指で確認する。

ウ 病的反射
正常では認められず、その出現が病的意義を有する反射である。
神経系の器質的障害の際に錐体路が障害されて初めて出現する反射と
されている。そのために錐体路性反射ともよばれる。

a Hoffmann反射(ホフマン反射)
母指尖で患者の中指の爪を鋭く手掌側にはじくと、示指と母指が屈曲する。
基本的には反射の亢進と同義であり、上位ニューロン障害を意味する。

b Tromner反射(トレムナー反射)
中指掌側を背側へはじくと、示指と母指が屈曲する。

c Babinski反射(バビンスキー反射)
足底外側を、マッチ棒のようなもので踵からゆっくり小指の方へ向かって
擦ると、反射的に母指が足背側に背屈する現象である(馬場p117の図6B)。
元も信頼できる錐体路徴候である。

エ クローヌス
検者が患者の筋腱に急激な他動的伸展を起こさせると、律動的な筋肉の収縮が
連続して生じるもので、錐体路障害が考えられる。

膝クローヌスと足クローヌスとがある。
膝クローヌスは、膝蓋骨の上端を母指と示指で把持し急速に末梢側へ押し下げる
もので、足クローヌスは、足底を把持し急速に足関節を背屈させるものである。

(3) 感覚
従来は正常、感覚鈍麻(hypesthesia)、感覚脱失(anesthesia)、
感覚過敏(hyperesthesia)などと定性的に評価したが、最近では健側
あるいは正常他部位を10とした際の被験部の相対的感覚を1~10で
自己申告させ、半定量的に表現することが多い。

感覚(知覚)の種類については前述のとおりであるが、表在知覚のうち触覚は
筆や綿で軽く皮膚表面を触れながら調べ、痛覚は先端を鈍にした安全な
ピンなどで皮膚を軽く刺しながら調べる。温覚は冷たい金属、暖めた湯の
入った試験官、アルコール綿などを適宜皮膚に当てながら調べる。

深部知覚のうち、振動覚は音叉を骨の突出部(胸骨、腸骨、肘頭、膝蓋、
手関節、足関節果部など)に当てて調べる。位置覚、運動覚は、手指、足指の
側面を摘んで他動的に動かし、動いた方向や位置を当てさせて調べる。

(4) 筋力・筋萎縮
徒手筋力テスト(manual muscle testing : MMT)を行い、下の表
(スタンダードp21表5)のとおり、0~5の6段階で評価する。
障害された筋の分布から障害高位を推定する(髄節高位と支配筋の位置関係に
ついては馬場p127表5参照)。

下位運動ニューロン障害や筋原性疾患では著明な筋萎縮を認める。
上位運動ニューロン障害では筋萎縮はわずかなことが多い。




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