頸椎損傷(脱臼・骨折)

(1) 上位頸椎(第2-第3頸椎椎間まで)損傷
ア 後頭顆骨折
Andersonの分類が広く用いられる(スタンダードp58図1)。
どのタイプも両側性に発生することがあり、タイプⅢが両側性に発生した場合には
不安定性が強くでる。

後頭顆骨折は、交通事故などによる大きな外力で発生することが多いため、
頭部外傷等を合併し、意識レベルが低下していることが多い。
意識ある患者では頭痛や後頭部痛を訴えるが、それ以外は特徴的な症状に乏しい。

神経症状は脳幹以下の様々な症状が起こりうる。

イ 環椎後頭関節脱臼
自動車の追突事故による受傷が代表的である。シートベルトで体幹は
固定されているが、頭部は固定されていないため、衝突により急激な
減速が起こると環椎後頭関節に伸延力が働き脱臼が発生する。
明らかな脱臼例では死亡例も多い。

ウ 環椎骨折
軸圧により発生する。後弓骨折と外側塊骨折、破裂骨折に分類される
(スタンダードp59図2)。後弓骨折は両側性が多く、外側塊骨折は片側性が多い。
破裂骨折は4箇所骨折することが多いが、3箇所のときは前弓の中央で骨折する。
環椎骨折は、脊柱管が広がる方向に転位するので、神経損傷は稀である。

エ 歯突起骨折
Andersonにより、歯突起先端部の骨折(タイプⅠ)、歯突起頚部の骨折
(タイプⅡ)、骨折線が椎体に及ぶタイプⅢに分類される
(スタンダードp59図3)。
死亡率は25~40%との報告があるが、生存例では神経損傷を
伴わないことが多い。最も一般的な症状は頚部痛であり、顎を支える手を
離せないほど激烈な痛みを伴うことも稀ではない。

オ 外傷性軸椎すべり(軸椎関節突起間骨折)
交通事故で発生することが多い。下記図(スタンダードp60図4)
のとおり分類される。Francisらによると神経損傷の合併率は6.5%である。
他の脊髄損傷を合併することが少なくない。

(2) 中下位頸椎損傷
Allen分類が広く用いられ、受傷時にとる頸椎の姿位と、その姿位を強いる
最初に働く最も顕著な外力により6個の範疇に分類される(スタンダードp61図5)。

各範疇の頸椎損傷のstageが進行するにつれ神経損傷も高度になる傾向があるが、
頸椎損傷の程度と神経損傷の程度は必ずしも比例しない。

ア compressive flexion(CF)
軽度屈曲位の頸椎に頭頂方向から後下方に向かう圧迫力が加わることにより、
頸椎はさらなる屈曲を強いられ発生すると考えられる。交通事故や
飛び込みなどで発生する。Allenの報告では中下位頸椎損傷の21%を占める。
CF stage5(あるいはstage4と5)がteardrop fracture(Schneiderらにより
発表された頸椎骨折で、椎体下縁の前半分は上位の椎体に圧迫され骨折し
前方へ転位し、椎体後方部は後方に転位、脊柱管内に突出し、脊髄損傷を起こす)に
相当すると考えられる。

① CF stage1
椎体前上縁が損傷し丸みを帯びる状態である。Allenの報告では、
脊髄損傷は1例もない。

② CF stage2
CF stage1に加え、前方椎体高の減少をみる。脊髄損傷を免れることが多い。

③ CF stage3
骨折線が椎体前面から斜め後下方に走り椎体終板に達し、
嘴(くちばし)上の骨片を形成する。

④ CF stage4
CF stage3に加え、3mm未満の椎体後下縁の脊柱管内突出をみる。
高率に脊髄損傷をみる。

⑤ CF stage5
CF stage4よりさらに椎体後下縁が脊柱管内に突出する。椎弓損傷はないが、
椎間関節は離開し棘突起間は開大する。これは後縦靱帯と後方靱帯複合体
(後縦靱帯を含まずそれより背側の靱帯複合体)の損傷を示唆する。
Allenの報告では全例に脊髄損傷を伴い、完全麻痺例を高率に認める。

イ vertical compression(VC)
中間位の頸椎に軸圧が加わり発生すると考えられる。交通事故などによる。
stage3は破裂骨折に相当する。Allenの報告では、発生頻度は9%である。

① VC stage1
上下の椎体終板のどちらかに陥凹変形をきたす。

② VC stage2
上下両方の椎体終板の陥凹変形をきたす。椎体に骨折が及んでもよいが、
転位はほとんど認められない。

③ VC stage3
椎体の破裂骨折で、骨片は各方面に広がり、脊柱管内にも突出する。
骨性後方要素が損傷を免れる場合と損傷される場合があり、
後者では後方靱帯複合体も損傷される。高率に脊髄損傷を伴う。

ウ distractive flexion(DF)
後下方から前上方に向かう外力が後頭部に加わると、屈曲位をとる頸椎では
最初に後方要素に張力が働き、次に前方が更なる屈曲を強いられ、
発生すると考えられる。Allenの報告では、発生頻度は37%である。

① DF stage1
後方靱帯複合体の損傷により椎間関節が亜脱臼し、棘突起間が開大する。
椎体前上縁が丸みを帯びたり椎体の圧迫骨折を伴うことがある。

② DF stage2
片側椎間関節脱臼であるが、靱帯損傷の程度は様々であり、
機能撮影による評価が必要である。回旋転位もみられ、脱臼側への棘突起の変位、
鉤椎関節の開大がみられる。

③ DF stage3
椎間関節の両側脱臼であり、椎体は前方に約50%転位する。
下関節突起が完全に上関節突起の前方に転位するものと、下関節突起が
上関節突起に乗り上げ、あたかも鳥がとまり木にとまったような形をとる
場合もある。脊髄損傷を伴うことが多い。

④ DF stage4
極めて不安定な両側椎間関節脱臼で、椎体がほぼ100%前方に転位する例や、
椎体間が大きく離開するfloating vertebraを呈することもある。
完全麻痺となることが多い。

エ compressive extension(CE)
前頭部や顔面に外力が加わり、頭部は体の方へ押され、頸椎は伸展を
強いられて発生すると考えられる。Allenの報告では、発生頻度は24%である。
脊髄損傷を伴うことは他の損傷に比し多くはない。

① CE stage1
片側の骨性後方要素(関節突起、椎弓根、椎弓)の骨折である。
椎間板が損傷されると椎体の回旋不安定性を伴うことがある。

② CE stage2
左右両側の椎弓骨折で、典型例では連続性に多椎弓に生じる。
他の組織の損傷は明らかではない。

③ CE stage3
両側の関節側塊周囲(関節突起、椎弓根、椎弓)の骨折である。
椎体の前方転位はない。

④ CE stage4
stage3にさらに椎体の前方転位を伴う。転位の幅は椎体前後径未満である。

⑤ CE stage5
椎体前後径を超える前方転位を伴う。靱帯成分の損傷は2箇所の高位で生じる。
後方は損傷椎体とその上位の椎体間で、前方は損傷椎体と下位椎体間で生じる。
下位椎体の前上縁は前方転位した椎体に剪断される。

オ distractive extension(DE)
顔面や頭蓋前面に加わる外力により頸椎が伸延され発生すると考えられる。
比較的年長者の転落事故で起こることが多い。Allenの報告では、
発生頻度は6%である。脊髄損傷を伴うことが多いが、完全麻痺例は
1例のみである。

① DE stage1
前方靱帯複合体の損傷か椎体の横骨折である。靱帯損傷が一般的で、
X線では椎間腔の開大がみられる。後方転位はない。

② DE stage2
stage1に加え、後方の靱帯が損傷される。上方椎体は後方脊柱管内に転位する。
頭位によっては自然に整復されることが多く、仰臥位の側面X線では
見逃されることがある。

カ lateral flexion(LF)
頭部が片方向に圧迫され発生すると考えられる。Allenの報告によると、
発生頻度は3%で、脊髄損傷を免れることが多い。

① LF stage1
椎体の非対称性の圧迫骨折に同側の後方骨性要素の骨折が加わる。

② LF stage2
stage1にX線正面像で転位を伴うものである。




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