脊髄横断損傷時の障害

(1) 特徴
脊髄横断損傷時の特徴的な症状は、第1には前述した損傷部位以下の運動・
知覚麻痺、および膀胱直腸障害である。

第2は、損傷を受けた脊髄髄節の支配筋(馬場p127表5)の運動障害は
下位運動ニューロン障害の症状を呈し、この損傷部位より末梢部の脊髄髄節が
支配する身体部位では上位運動ニューロン障害の症状を呈することである。

上位運動ニューロンは大脳皮質細胞から脊髄前角細胞に接続するまでの
ニューロンであり、下位運動ニューロンは、脊髄前角細胞から筋肉との
接続部までのニューロンである。上位運動ニューロンの障害は一般に
中枢性障害、下位運動ニューロンの障害は末梢性障害とよばれる。
表(馬場p120表2)のとおり、それぞれの障害時にあらわれる症状は
全く異なるので、障害部位の診断に役立つ。

(2) 上部頸髄(第1~4頸髄)の障害
この部位の横断障害で重大な症状は呼吸筋麻痺である。呼吸筋のうち肋間筋は
胸髄の前角運動ニューロンにより、また前述のとおり横隔膜は第3~5頸髄の
前角運動ニューロンにより支配されているので、頸髄までのレベルで脊髄の
横断障害をきたすと、延髄呼吸中枢から呼吸運動に携わる脊髄前角への伝導路が
遮断されるため、肋間筋も横隔膜も麻痺し、完全呼吸麻痺をきたす。

呼吸筋麻痺のほかには、四肢麻痺を呈する。この場合、損傷部位より末梢に
至る神経路は、脊髄前角に到達する前に損傷されているので、
上位運動ニューロン障害の症状、すなわち四肢の痙性麻痺(筋肉が硬直し
手足の運動ができない状態)を呈する。

(3) 下部頸髄(第5~8頸髄)の障害
この場合も四肢麻痺がみられる。上肢は第5頸髄から第1胸髄までの
運動ニューロンによって支配されているので(馬場p127表5)、
上肢は弛緩性麻痺(筋肉がだらんとして随意運動が全くできない状態)を、
体幹と下肢は痙性麻痺を呈する。

例えば、第7頸髄が横断損傷を受けた場合を検討すると、同頸髄の両側の
前角細胞が障害されるので、同頸髄の支配運動領域の両上肢に下位運動
ニューロン障害の症状である弛緩性麻痺が生じる。同時に、両側の
脊髄白質内を下行していた体幹や下肢への神経線維も第7頸髄の部分で
障害されることになるので、体幹や下肢には両側上位運動ニューロン障害の
症状である痙性麻痺が生じる(馬場p126図13)。

また、このレベルでの横断症状の場合には呼吸筋のうちの肋間筋の麻痺を
きたすため不完全な呼吸障害がみられるが、横隔膜は麻痺しないので
呼吸することは可能である。

(4) 胸髄の障害
運動麻痺は対麻痺(両側下肢の麻痺)をきたし、麻痺の症状は痙性麻痺である。

(5) 腰髄以下の障害
馬場元毅『JNNブックス 絵で見る脳と神経 しくみと障害のメカニズム』
126頁(医学書院 第3版)によると、運動麻痺は対麻痺を呈し、
麻痺の症状は弛緩性麻痺とされる。




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