症状の概説

(1) 局所症状
損傷された脊椎の局所症状として、局所の疼痛、叩打通、腫脹、変形、
可動域制限などがみられる。そのほか顔面や頭部、腰背部などの体幹に
しばしば挫傷、擦過傷、打撲などが認められる。

(2) 麻痺
損傷された脊髄症状として種々の麻痺を呈する。
麻痺は、大きく、完全麻痺と不全麻痺とに大きく分けられる。
完全麻痺では、損傷部以下の運動、知覚が脱失する。不全麻痺は、損傷の程度、
高位によって様々な麻痺を呈する。障害部位ごとの麻痺の特徴は後述するが、
基本的に、頸髄損傷では四肢麻痺(両側の上・下肢すべてに生じた麻痺)、
胸腰髄損傷では対麻痺(両下肢の麻痺)となる(運動麻痺の種類については
馬場p119図7参照)。

脊髄麻痺は、表(戸山芳昭ら監修「整形外科医になるための診療スタンダード1」
(以下「スタンダード」)p223の表1)のように5型に分類される。
Ⅰ型は中心部損傷、Ⅱ型は前側部損傷、Ⅲ型は後側部損傷、
Ⅳ型は半側部損傷(Brown-Sequard症候群)、Ⅴ型は横断性損傷型である。

麻痺の評価法としてFrankel分類(スタンダードp223の表2)が
用いられることが多く、簡便で有用であるが、より詳細な評価法として運動、
知覚を点数化したASIA(American spinal injury association)の評価法が
用いられる。また、上肢筋力からみた頸髄損傷の分類であるZancoli分類も
有用である(スタンダードp223の表3)。

(3) 全身症状
 
ア 循環障害
頸髄損傷及び上記胸髄損傷では交感神経が遮断され副交感神経優位になるため、
心筋収縮力は低下し、心拍出量の低下、徐脈、血圧低下が起こり、
血管運動神経の遮断による血管拡張はこれを助長する。

イ 呼吸障害
頸髄損傷では、特に呼吸障害に注意しなければならない。
損傷部位が高度になるほど呼吸障害の程度は重篤になる。
横隔膜は第3~5頸髄節神経支配であるため、第3頸髄節以上の損傷では
直ちに人工呼吸を行わないと救命できない。それ以下の頸髄損傷では、
呼吸筋である肋間筋、腹筋群が麻痺するため、胸郭運動障害が起こり
喚気不全となる。

ウ 膀胱直腸障害
これは、中枢性あるいは末梢性麻痺により、排尿機能障害をきたした状態であり、
尿閉、残尿、失禁、排尿遅延など、麻痺の程度で種々の症状がみられる。

副交感系の骨盤神経が膀胱利尿筋を支配し、尿意もこの神経を介して伝わる。
一方、脳脊髄神経の陰部神経は外尿道括約筋を随意的にコントロールしている。
両神経の中枢は第2、3、4仙髄にあり、大脳からの支配を受けている。

脊髄障害などで脊髄利尿中枢より上位で損傷された場合、反射が亢進し、
少量の尿貯留で排尿反射が起こり、抑制は不可能となり、失禁となるが残尿は
比較的少ない。一方、仙髄反射中枢や馬尾あるいは骨盤内での末梢神経の
損傷すなわち排尿反射弓の損傷では排尿反射自体が消失し、膀胱内圧は低下し
容量が増大し、残尿が多く、横溢性尿失禁となる。

脊髄損傷では膀胱直腸障害は必発であり、軽症例を除けば急性期はほぼ尿閉の
状態であると考えられる。




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