脊髄と脊椎

ア 脊髄の区分
脊髄は、頭蓋内の脳とは延髄で境されて、中枢神経系の一部を構成している。
吻側から尾側に向かって、頸髄8個、胸髄12個、腰髄5個、仙髄5個、終糸1個、
計31個の小節に分けられている(馬場元毅著「JJNブックス絵でみる脳と
神経しくみと障害のメカニズム」(以下「馬場」)p52図1)。この小節は、
竹の節に例えて「髄節」とよばれる。各髄節ごとの部分名称は、
図(日本脊椎脊髄病学会偏『脊椎脊髄病用語事典』2~7頁)のとおりである。

それぞれの髄節からは頸神経8対、胸神経12対、腰神経5対、仙骨神経5対、
尾骨神経1対、計31対の脊髄神経が出ている(馬場p52図1)。
これらはすべて末梢神経系に属する。

イ 脊髄神経の前後
脊髄神経は、脊髄の腹側と背側から1対ずつ出て合流している。
この神経の束を脊髄神経根とよび、腹側の神経根を前根、背側の神経根を
後根とよぶ(馬場p53図2)。

前根は運動に関係する遠心性神経線維が、後根は知覚に関係する
求心性神経線維が通っている。これをベル=マジキャンディの法則という。

ウ 脊髄を保護する仕組み
脊髄は、外側から順に硬膜・くも膜、軟膜という3層の髄膜によって包まれ、
くも膜と軟膜との間の脊髄くも膜下腔は、頭蓋内くも膜下腔と連絡している。

脊髄は、髄膜に包まれることにより保護され、さらに、髄膜の外をしっかり
ガードする脊椎骨により保護されている(馬場p53図3)。この脊椎骨の数は
26個である。

脊椎骨の数が脊髄神経(31対)と同数でないのは、小児期には5個あった仙椎が
成人になると癒合して1個となり、4~6個の尾椎も癒合して1個となり、
また、頸髄神経が8対であるのに対し頚椎が7個しかないためである。
したがって、脊椎骨の数は、頚椎7、胸椎12、腰椎5、仙椎1、
尾対1で合計26個となる(馬場p52図1)。

このように、脊髄は、脊椎骨と髄膜で保護されているところ、脊椎骨の
横突起前方に脊髄神経の通路となる溝が刻まれている。この溝は、上下2つの
脊椎骨によって椎間孔という丸い孔を形成する。椎間孔は、脊髄神経が
通過する唯一の開口部である(馬場p53図3)。

エ 脊髄髄節と脊椎の位置関係
脊髄を外部から見ても胸髄と腰髄の区別はつかないので、この区別のためには、
脊髄神経根がどの脊椎骨の間を通り抜けて末梢に出て行くかを見極める必要がある。

例えば、第12胸椎と第1腰椎の間を通る神経根は第12胸椎神経、
第5腰椎と第1仙椎との間を通る神経根は第5腰椎神経根であり、
これらを脊髄方向に辿れば、これらの神経根が出てきた脊髄髄節が
それぞれ第12胸髄、第5腰髄であることがわかる(馬場p52図1)。

頸髄に関しては、第1神経根は頭蓋骨と第1頸椎の間を通り抜けるため、
第7頸椎の下は第8頸髄神経根が通ることがわかり、前述した「頸椎が
7個であるのに対し頸髄神経が8対」という構造が理解できる。

また、脊椎と脊髄髄節とは、末梢に行くにしたがい相対応する髄節にズレが
生じる。例えば、第5頸髄髄節は第4頸椎のレベルにあるが、第5胸髄は
第3胸椎のレベルにあり、第5腰髄に至っては第11~12胸椎の高さにある
(馬場p52図1)。

脊髄の最下端である仙髄・尾髄部(円錐とよばれる)は、普通は第1腰椎の高さで
終了し、第2腰椎以下の脊椎腔には脊髄はなく、馬尾とよばれる比較的太い
神経線維の束(腰髄や仙髄の神経根)が対応する脊椎の出口まで走行している。

このように、脊椎骨と脊髄髄節の対応関係に差(ズレ)が生じるのは、
全脊椎よりも全脊髄の長さがずっと短いからである。

オ 脊髄の特徴的な構造
脊髄の構造上の特徴として第1に挙げられるのは、直径わずか1cmほどの
細い組織の中に、手・足・体幹へ下降する運動神経や中枢方向に上行する
知覚神経の繊維が詰まって上下していることである。したがって、
ここに僅かな病変が生じても、四肢麻痺などの脊髄横断症状が出現しうる
ことを理解する必要がある。

第2の特徴は、大脳とは逆に、脊髄の中央部に灰白質(前角細胞などの
神経細胞が集中する部分)があり、その外側に灰白質を取り囲むように
白質(神経線維の走行する部分)があることである(馬場p54図4)。
白質は前索、側索、後索などに分類され、それぞれの部位を運動に関する
錐体路・錐体外路の遠心性神経線維束群や、知覚に関係する
求心性神経線維束群が走行している(馬場p54図4)。

第3の特徴は、運動系の幹線路である皮質脊髄路内を通る神経線維は、
外側から行き先別に仙髄、腰髄、胸髄、頸髄に行くものの順番に配列されて
いることである。同様に、知覚系の幹線路である脊髄視床路内を通る神経線維も、
外側から起点別に仙髄、腰髄、胸髄、頸髄から来るものが順番に
配列されている(馬場p54図4)。

したがって、頸髄が外側から圧迫された場合には下肢の運動・知覚障害が
まず起こり、逆に頸髄の中心部に腫瘍などが発生すると上肢の麻痺が先行する。




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