脇見運転

裁判例1          神戸地裁平成13年8月10日判決

当時の慰謝料の基準     2000万円
増額慰謝料額        2500万円(500万円アップ!)

どのような事故だったか?

本件は、原付バイクと乗用車の事故です。

加害者は、時速60kmで乗用車を運転していましたが、前方を走行していた
原付バイクに直前まで気付かず、原付バイクの後部に自車を衝突させ、
運転していた被害者(20才男子大学生)を路上に転倒させて、
死亡させたというものです。

加害者は、なぜ衝突直前まで原付バイクに気付かなかったのでしょうか。

その理由は、コンタクトレンズにありました。
加害者は、コンタクトレンズを装着していましたが、運転中に目の乾きを感じ、
右手で両目のまぶたを押さえてマッサージをした状態(うつむいた状態)で
運転をしていたのです。

そのため前を走る原付バイクに気付かず、バイクに衝突したのです。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント
①前方不注視という一方的な過失
②最愛の息子を失った両親の心情

解説

平成18年度の原付以上運転者による死亡事故を、法令違反別に分けた
統計があります。

それによれば、脇見運転が原因の死亡事故は全体の14.7%を占め、
漫然運転と並んでもっとも多い割合です。

ちなみに、スピード違反は全体の9%、酒酔い運転は全体の2%ですから、
脇見運転が原因の死亡事故がいかに多いかが分かります。

脇見運転の怖さは、脇見をしたほんの一瞬の間に、かなりの距離を車が
前進してしまうという点です。

本件の場合、加害車両のスピードは時速60kmでしたが、時速60kmとなると
1秒間に約16mも進みます。

ほんの少しの脇見でも、あっという間に前を歩く歩行者や走行する自転車等を
ひいてしまうおそれがあるのです。

脇見運転はこのように危険極まりない行為であるため、裁判でも厳しい指摘がなされ、
加害者側の悪質事情として慰謝料に反映されます。

本件判決も、慰謝料算定にあたり、ご遺族の精神的苦痛等に言及しつつも、
脇見運転については「横着な運転態度」「一方的かつ基本的な注意義務違反」
などと明確に指摘した上、基準よりも500万増額させています。  

裁判例2

当時の慰謝料の基準     2000万円~2200万円
増額慰謝料額        2500万円(300万円~500万円アップ!)

どのような事故だったか?

被害者は、12才の男子中学生です。
中学では野球部に属し、将来は野球選手になる夢を抱いていました。

事故は、被害者が自転車で祖母宅から帰る途中に起きています。
夏休み中の出来事でした。被害者は自転車で交差点を横断していましたが、
ウインカーを出さず脇見をしながら右折してきた加害者運転の乗用車に衝突され、
死亡しました。

頭蓋底粉砕骨折等の傷害を負い、ほぼ即死の状態でした。
この事故の際、加害者は、助手席の同乗者との会話に夢中でそちら側に顔を
向けていたため、衝突するまで全く被害者に気付いていませんでした。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①脇見運転でウインカーも出さないという一方的な過失
②前途ある被害者の無念、彼を失った遺族の無念
  
解説

運転者の注意をそらすものは、車の中にたくさんあります。

カーステレオやエアコンなどの操作、タバコ、周囲の風景、同乗者との会話・・
などなどです。

本件では、同乗者との会話が脇見の原因でした。

この判決も、慰謝料算定にあたり、脇見運転について、自動車運転者として最も
基本的な注意義務を怠った一方的かつ重大な過失であると厳しく指摘し、
加害者が少しでも安全確認をしていれば悲惨な結果は招かなかったと述べており、
この点が慰謝料増額のポイントとなっています。

また本件では、人生これからという時期に突如命を奪われた被害者の無念、
ご遺族の無念さといった点も慰謝料算定に影響を与えています。

脇見運転による事故は、運転者が、運転以外の何かに気をとられたか、あるいは、
運転以外の何かをしようとしたために発生します。

一旦車を止めてさえいれば、ほとんどの事故は防げたことでしょう。
ただそれだけのことを怠ったために、尊い命が奪われ、ご遺族は一生深い悲しみを
背負っていかねばなりません。




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