無免許運転

裁判例1         大阪地裁平成14年1月22日判決

当時の慰謝料の基準    162万円~177万円
増額慰謝料額       240万円(63~78万円アップ!)

どのような事故だったか?

本件は、直進車と右折車の事故です。事故現場は、南北方向と東西方向に走る
片側1車線の道路が交差する交差点(信号機あり)です。

被害者(事故当時大学1年生の男子)が原付バイクで交差点を右折しようと
したところ、反対車線を直進してきた乗用車が直前で右折に気付き、
バイクを避けようと急制動等の措置をとったものの避けられず、
バイクに衝突したというものです。

この事故により被害者は、91日間の入院と14日の通院を余儀なくされました。

この事故の加害者は、過去に速度違反や信号無視等を繰り返したため、
違反点数が累積し、事故の7ヶ月ほど前に運転免許取消処分を受け、
事故当時は無免許でした。

また、加害者は、事故当日の夕方、500mlの缶ビール3本を飲んでおり、
事故直後の飲酒検査では、呼気1リットルあたり0.25mgのアルコールが
検出されました(酒気帯び運転)。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①無免許運転と酒気帯運転
②受傷の内容や入通院日数
 
解説

平成18年度における無免許運転の取り締まり件数は5万6304件で、
平成17年度に比べると2000件ほど減っていますが、なかなかなくなりません。

無免許運転は、飲酒運転や居眠り運転のように運転者の身体や精神それ自体に
影響を及ぼすものではありません。

しかし、無免許だということは、教習所等で必要な研修を済ませていないため
免許がもらえていない、あるいは、一度免許を取得しても免許停止や免許取消処分を
受けたということです。

運転に必要な基本的技術やマナーが身についていないか、一度身につけたが
忘れてしまった、という人々でしょう。

このような人々の運転は、当然ながら危険です。そのため、道路交通法も、
1年以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい態度でのぞんでいます
(同法64条、117条の4第2号)。

本件の加害者も、交通違反を繰り返して免許取消しを受けた状態で運転をしており、
運転技術やマナーにはかなりの問題があるといわざるを得ないでしょう。

無免許のほかに酒気帯びもあったということですから、なおさらです。
本判決も、このような加害者の悪質さを慰謝料に反映させています。

本判決は、入通院の慰謝料算定にあたり、通常考慮される受傷内容や入通院日数
といった一般的な事情のほかに、無免許運転と酒気帯運転を明確に指摘したうえで、
入通院慰謝料を240万円としました。

本件の入通院日数(入院日数91日間、通院実日数14日間)からすると、
慰謝料の基準は162万から172万といったところですから、無免許運転と
酒気帯び運転が加わったことにより、明らかに基準よりも慰謝料が増額されている
ことが分かります。

裁判例2          平成13年2月22日東京地裁判決

当時の慰謝料の基準     2000万円
増額慰謝料額        2500万円(500万円アップ!)

どのような事故だったか?

被害者は、32才独身女性で、公務員です。事故現場は、国道バイパスと町道の
交わる信号機のない交差点で、乗用車同士の事故でした。

被害者が、町道から交差点を直進しようと時速15km~20kmで交差点内に
進入したところ、右側から指定制限速度を20kmオーバーする時速80kmで
国道を走行してきた加害者運転の乗用車に衝突され、死亡したというものです。

加害者は、21才の頃に自動車学校を卒業したものの学科試験に失敗して
運転免許試験に不合格となり、その後も免許を取得せず、事故当時無免許でした。

また、加害者運転の乗用車は、いわゆる車検切れの車でしたが、加害者は、
週に1回程度の割合でこの車を運転していました。

さらに加害者には、本件事故以前に無免許運転で罰金刑を受けた前科がありました。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①加害者が法を守る態度に欠けていること
②加害者の被害者側に対する対応が不誠実であること
③被害者の年齢等
  
解説

加害者は、教習所で必要なカリキュラムを終えていません。
さらに、無免許運転で罰金刑を受けたこともあるのに、懲りずに無免許運転を続け、
あげく死亡事故を起こしたというものです。

加害者は、無免許で車検切れの車を日常的に運転していたということですから、
法を守ろうという意識はほとんどないと言えるでしょう。

判決が慰謝料算定にあたりまっ先に指摘したのもこの点でした。

判決は、加害者が著しく遵法精神に欠けていることが、事故発生の大きな原因だと
指摘したのです。

免許を取得し車検を受けるといった、車を運転するうえで基本的なルールすら
守れない者は事故を起こして当然です。

このような者の運転する自動車に衝突されて死亡した被害者の親族の悲しみは
甚大なものがあります。

加害者側の不誠実な対応や被害者の年齢も慰謝料算定にあたり考慮されていますが、
ルールを無視した加害者の悪質さという点が、特に慰謝料増額に大きな影響を
与えていると言えるでしょう。




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