居眠り運転

裁判例1       京都地裁平成13年11月16日判決

当時の慰謝料の基準   2200~2600万円
増額慰謝料額      2700万円(100万円~500万円アップ!)

どのような事故だったか?
被害者は、49才男性で、運送会社の社員でした。妻と2人暮らしで、妻も働きながら、
5年前に購入した自宅のローンを返済中の事故でした。

24年間連れ添った夫婦でしたが、子供がいなかったこともあり、老後は夫婦での
旅行を楽しみにするなど、夫婦の結びつきが強く仲の良い夫婦だったようです。

事故は、加害者運転の乗用車がセンターラインを超えて対向車線に侵入し、
被害者運転の乗用車に衝突し、被害者を死亡させたというものです。

朝方の事故でしたが、事故の際、加害者は、夜通し遊び回って自宅に帰る途中であり、
前方が見えにくいほどの眠気をもよおしながら時速60kmで運転し、
仮眠状態となった上、対向車線に飛び出しました。

また、加害者の飲酒検査では、呼気1リットルにつき0.1ミリグラム未満の
アルコールが検出されています。
  
裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

①眠気をもよおしているのに運転を続けたこと
②長年連れ添い老後を楽しみにしていた夫を失った妻の心情
  
解説

居眠り運転は、道路交通法上、「過労運転」として処罰の対象となり、3年以下の
懲役または50万円以下の罰金が用意されています(道路交通法66条、
117条の2第1号の2)。

もちろん、人を傷害もしくは死なせれば、業務上過失致死傷罪(刑法211条)の
適用がありますし、薬物やアルコールが原因での居眠り運転であれば、
危険運転致死傷罪(刑法208条の2)で重い処罰が待っています。

法は、居眠り運転には厳しい態度でのぞんでいます。刑事の裁判例などでも、
眠気を感じた時点で運転を中止し疲労回復に努めるなど、安全を講ずべき義務が
あるとし、これを怠ることは、運転者としての基本的な注意義務を怠る重大な
過失などと厳しい指摘がなされています。

民事裁判でも、居眠り運転は、重過失などとして慰謝料の増額に反映されます。

本件も民事裁判ですが、裁判所は、加害者が運転者としてわずかな自覚を
持っていれば回避できた事故と指摘し、これを重く見て、慰謝料を通常よりも
100万円~500万円増額しました。

連れ添った夫を亡くした妻の心情にも配慮していますが、慰謝料算定にあたり
もっとも重視したのは、眠気を感じても運転をやめなかった運転者の軽率さ
と言えるでしょう。

裁判例2            大阪地裁平成13年7月13日判決
 
当時の慰謝料の基準       2600万円
増額慰謝料額          3000万円(400万円アップ!)

どのような事故だったか?

被害者は、57才男性会社員で、妻と子供3人がいました。
事故現場は、被害者の勤務先の玄関先でした。被害者は、勤務先での飲み会を
終えた後、飲酒運転を避けようと妻に迎えを頼み、勤務先玄関先で妻の到着を
待っていました。

そこに、加害者運転の乗用車が時速40km~50kmで衝突し、被害者を
死亡させたというものです。

加害者もまた勤務先の飲み会で酒を飲んでいた状態でしたが、迎えを頼むこともせず、
自分で運転をし、酔いで眠気をもよおして前方注視が困難になっても運転を続けました。

その結果、現場がT字路交差点で直進ができないことにも気付かずに直進し
道路外に乗り上げ、被害者に自車を衝突させたのです。

裁判所が慰謝料を増額した理由のポイント

① 眠気をもよおして前方注視も困難な状況で運転を続けたこと
② 被害者に落ち度はないこと
  
解説

この判決は、眠気は酔いによるものと認定しています。

飲酒が眠気を招いて運転に危険を及ぼすことは容易に想像がつきますが、
それでも飲酒が原因の居眠り運転による事故はなくなりません。

居眠り運転も、長距離トラック運転手にしばしば見られるような過密労働による
過労や睡眠不足が原因の場合(筆者も、夜間に高速道路を運転していると、
前方をふらふらと蛇行するトラックを見かけてヒヤッとすることがあります)や、
昨今、新幹線運転士の居眠り運転で話題になった睡眠時無呼吸症候群(SAS)
など病気が原因の場合もあるでしょう。

これらの場合も、もちろん居眠り運転は許されることではありませんが、
飲酒の場合は、その身勝手さからしてなおさら許せない、というのが素直な
感情ではないでしょうか。

本件判決も、加害者の過失は「極めて重大かつ悪質」と飲酒により居眠りを
招いた点を厳しく糾弾しています。

この点が通常よりも高額の慰謝料となった一番のポイントでしょう。




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